教育

2017年10月29日 (日)

読みました(洋書/教育) ~ Helping Children Succeed

ベストセラーになった"How Children Succeed"(邦題「成功する子 失敗する子」)の続編とも言うべき作品です。前作がとても興味深かったのと、フローレンス代表の駒崎氏が邦訳「私たちは子どもに何ができるのか」のまえがきを書いていることもあり、読んでみました。

前作の"How Children Succeed"で、子供たちが将来うまくやって行く為には、Grit、Perseverance、Resilience、Zest、Curiosityといったnoncognitive skillsを身に付けることが大切だ、という結論になったのですが、「それでは、子供たちにそのようなスキルを身に付けさせる為には、一体どのようにしたら良いのか?」という残された課題について考察しているのが、本書になります。

大まかな著者の主張としては、「そのようなスキルを子供たちに直接的に教え込むことはできない。そのようなスキルを身に付けられるような環境を子供たちの周りに整える必要がある。」ということだと思います。

Rather than consider noncognitive capacities as skills to be taught, I came to conclude, it's more accurate and useful to look at them as products of a child's environment.

If we want to improve a child's grit or resilience or self-control, it turns out that the place to begin is not with the child himself. What we need to change first, it seems, is his environment.

乳幼児期であれば、家庭で、若しくは幼稚園等で、子供たちの言葉・行動・様子に暖かく反応してあげれる環境を作ることが大切、とのことです。

These rudimentary interactions (="serve and return" interactions) between parents and babies, which can often feel to parents nonsensical and repetitive, are for the infants full of valuable information about what the world is going to be like. More than any other experiences infants have, they trigger the development and strengthening of neural connections in the brain between the regions that control emotion, cognition, language, and memory.

But first, before they set foot in preschool, they need to spend their first three years in an environment with plenty of responsive, warm and serve-and-return interaction with caring adults. And if they can't get that at home, they need to get it at a place like Educare.

学校に行くようになれば、やはり子供たち一人一人の話をしっかり聞き、一人一人への期待をしっかり伝えると共に、一方的に講義をするのではなく、自主的・主体的に学べるような環境、子供たちの3つの欲求(competence, autonomy and relatedness/belonging, independence and growth)を満たすような環境を作ってあげることが大切、とのことです。例えば、グループワーク等で、子供たちの能力を少し超えるような課題にチャレンジさせる、等。厳しい規則を決めたり、ご褒美等のインセンティブを与えたりしても、殆ど効果はないようです。

The way kids learn that (=character) is by continually being compelled and supported to take risks - by sharing their work with their parents, by sharing thier work with groups, by speaking out in class, by presenting their work.

In order for a student to truly feel motivated by and about school, he also has to perceive that he is doing important work - work that is challenging, rigorous, and deep.

The experience of persisting through an intellectual challenge and succeeding despite the struggle is a profound one for school-children...It produces feelings of both competence and autonomy...

また、そのような環境を作る為には、子供たちだけでなく、環境を作る主体である親や先生たちも同様にサポートしていく必要がありそうです。

本書は、一章が短く、ポイントがコンパクトにまとまっていて読み易いのですが、思ったよりも具体例が少なく、読み物としてはちょっと物足りない感じがしました。個人的には、もう少しページ数を増やして、前作のSpiegel先生の話のような具体例を沢山挟み込んで欲しかったなぁ…と思いました。

とは言え、興味深い話ではありますので、教育・育児に興味のある方にはお勧めできると思います。

ちなみに、邦訳はこちら…

2017年8月 5日 (土)

読みました(教育・ノンフィクション) ~ Becoming Brilliant

7年前くらいに読んだ"Einstein Never Used Flash Cards"(2003年)の著者が、昨年、新しい本を出していたことを知って、早速読んでみました。

本作では、"Einstein Never Used Flash Cards"で強く主張していた「自ら進んでやる遊び(Play)を通じて、子供は生きていく力を身につけるのである(Play = Learning)」との考えを根底におきつつ、これからの変化の早い世の中を生きていく子供達にとっては、単に知識を詰め込むだけではなく、次のような6つの能力(Soft Skills, 6Cs)を伸ばすことがより大事であると主張しています。そして、そのような能力を伸ばす為に我々大人はどうしたらよいか、具体的に提案をしています。

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1 Collaboration

まずは、自分自身の行動・気持ちをコントロールできるようになり、更には、お互いに助け合うことができるようになり、最終的には、お互いを信頼・尊重して、共通の目的に向かって協同することができるようになること。

(この能力を育てるためには、例えば…)

子供と一緒にキャッチボールをする。家族皆でボードゲームをする。お手伝いをしてもらう。ブラスバンドやサッカーチーム等の課外活動に参加させる。

2 Communication

相手の考え、気持ち等をある程度理解して会話等のやりとりができるようになった上で、最終的には、相手の考え、気持ち等を正しく理解して、自分の考え、意見等を簡潔に、的確に、丁寧に伝えられるようになること。

(この能力を育てるためには、例えば…)

スマホ等を脇に置いて、まずは子供の話をよく聞く。その上で、子供に広がりのある(決まった回答の無い)質問をする。5回以上のやりとりはしたいところ。小さい子であれば、ごっこ遊びを沢山させる、又は一緒にする。子供がテレビやスマホを見る時間を制限する。

3 Content

自分の持っている個々の知識を結びつけて何か新しいことに取り組むことができるようになり、最終的には、ある分野での専門性を更に高めて、これまでの知識(常識)を改善・修正できるようになること。

(この能力を育てるためには、例えば…)

子供と一緒に本を読んだり、宿題をしたりしながら、学んだ知識を子供の日常生活と結びつけて話を膨らませる。子供と公園に行って草木を観察したり、草木で何か描いたり作ったりする。楽しめるようだったら、キャンプやワークショップに参加させて、新しい経験をさせる。楽しく、興味をもって学べる環境・機会を出来るだけ沢山作る。

4 Critical Thinking

自分や他人の意見・方法等に対して疑問をもつことから始まり、世の中には自分と違う意見・方法等があることを理解するようになり、最終的には、様々な意見・方法等のうちどれがより優れているか、その根拠を確認しながら判断できるようになること。

(この能力を育てるためには、例えば…)

子供に興味がありそうな本を沢山読ませたり、様々な話をしたりして、世の中にはいろいろな考え方があることを知ってもらう。子供が質問してきたら、分かり易く答えるだけでなく、時々「どう思う?」と聴き返してみる。

5 Creative Innovation

得意分野において、豊富な知識を使って自分らしいユニークなものを生み出せるようなった上で、最終的には、他の分野にも影響を及ぼすような、世の中の問題・課題に対する新たな解決策を生み出せるようになること。

(この能力を育てるためには、例えば…)

子供に不要になった箱や布やガラクタを自由に使わせる(部屋はかなりちらかりますが…)。できるだけ自由に遊ばせて、なるべく口を出さない。美術館、博物館、音楽会、演劇等に行くのも、創造性を刺激するのでいい。

6 Confidence

新たなことを行うメリットとリスクを検討した上で、ある程度リスクをとって挑戦することができるようになり、最終的には、自分の能力を超えたことに対しても、失敗から学びながら、何度もチャレンジできるようになること。

(この能力を育てるためには、例えば…)

子供に対しては、成果ではなく「努力(過程)」を褒める。子供が何か失敗してしまったら、怒るのではなく、何が起きたのか訊いて、次に失敗しない為にはどうしたらよいか冷静に考えさせる。もし子供に好きなことがあれば、それを一杯やらせる。多少難しいことでも、できるだけ口出ししないで、子供に任せてみる。

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これら6つの能力は、お互いに関係しているので、それぞれをバランス良く伸ばしていく必要があります。また、子供は親をよく観察して学んでいるので、親自身も、これら6つの能力を伸ばしていくよう努力しなければならない(共に学んでいかなければならない)とのことです。子供に言うだけでは駄目ということですね…

正直な感想としては、これらの6つの能力すべてを最終的なレベルにまで引き上げるのは大変だと思います。ただ、方向性としては、知識偏重の教育に警鐘を鳴らす著者の考え方に同意できるので、目標として頑張っていければいいかと思っています。

本作も、様々な調査・観察・実験等を踏まえて分かり易く書かれており、最後まで興味深く読むことができました。但し、文章が少し固く、単語のレベルも私にとってはちょっと難しかったので、読むのに多少骨が折れました。

また、Walter Mischel氏の"Marshmallow Test"Elena Bodrova氏等の"Tools of the Mind"Angela Duckworth氏の"Grit Scale"等も出てきて、今まで読んだ本との関連性も分かり、より理解を深めることができました。

日々の子育てに役に立ちそうなアドバイスが沢山載っているので、この本も、特に子育て中の方にお勧めできると思います。本作も、そのうち邦訳が出るかな?

2017年7月 8日 (土)

読みました(教育・ノンフィクション) ~ The Marshmallow Test

心理学、教育関連の本で良く出てくる「マシュマロ・テスト(The Marshmallow Test)」の考案者、Walter Mischel氏が書いた本です。紀伊國屋の春の洋書バーゲンで見つけたので、読んでみました。

「マシュマロ・テスト」自体は、1960年代後半に考案された古いものです。観察者が、幼児の目の前にマシュマロ(別の物を使う場合もある)を1個置いて、

「これから、用事があってちょっと部屋を出ていくけど、また戻ってくるね。もし、私が戻ってくるまでマシュマロを食べないで待てたら、マシュマロを2個あげるよ。もし、私が戻ってくるまで待てなかったら、そのベルを鳴らしてね。その時は、マシュマロは1個だけだよ。」

と説明し、部屋を出て、外から幼児の行動を観察する実験です。この実験で、長い時間待つことができる子は、待てない子よりも、大人になってうまくやっていける傾向があることが、追跡調査から判明しています。

著者は本書で、この「マシュマロ・テスト」を端緒に、自制心(自制できる能力/self-control)が人生にどのような影響を与えるかについて、読者に語りかけるように、分かり易く説明しています。

本書の中で、「なるほどなぁ…」「覚えておきたいなぁ…」と思った箇所は、

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...parents who overcontrol their toddlers risk undermining the development of their children's self-control skills, while those who support and encourage autonomy in problem-solving efforts are likely to maximize their children's chances of coming home from preschool eager to tell them how they got their two marshmallows.

→よちよち歩きの頃は、つい、すぐに手を出したくなりますが、なるべくこらえる必要がありそう。既にこの頃から、自制心は育まれるようだ。

Our genes influence how we deal with the environment. The environment affects which parts of our DNA are expressed and which are ignored.

...human dispositions and behavior patterns, including character and personality, attitudes, and even political beliefs, reflect the complex effects of our genes, whose expressions throughout the course of life are shaped by a host of  environmental determinants.

→(自制心等の)人の性格や個性は、遺伝だけで決まる訳ではないし、環境だけで決まる訳でもない。双方が複雑にからみあって影響を与えているようだ。

...under high pressure and the threat of failure in the new school environment , the students who viewed their abilities as fixed soon began to get lower grades, doing progressively worse over the two years of junior high school. The students with a growth mind-set, in contrast, kept getting better and better grades over those two years.

→「努力すればできるようになる(能力が上がる)!」という気持ち・信念を持てるようになることが大切。

If you see more continuity between yourself now and yourself in the future, you probably put more value on delayed rewards and less value on immediate rewards and are less impatient than people who view their future selves as strangers.

→「現在の私(yourself now)」と「将来の私(yourself in the future)」との連続性(つながり)を意識する工夫が必要。

...the same question - "Why did I feel that way?" - reactivates the hurt when one is self-immersed, but it will cool the hurt and provide a more adaptive narrative when one is self-distanced, like an observer.

By increasing your psychological distance from the (painful) event, you reduce stress, cool the hot system, and can use the prefrontal cortex to reappraise what happened so that you can make sense of it, gain closure, and move on.

→自分に起きた嫌な出来事、辛い出来事は、壁にとまっている蝿になった気で(as a fly on the wall)、一度距離を置いて覚めた目で眺めてみると良さそう。

...positive self-affirming mental states, including positive illusions (as long as they are not extreme distortions of reality), enhance healthier physiological and neuroendocrine functioning and lead to lower stress levels. The realists who perceive themselves more accurately experience lower self-esteem and more depression, and they are generally less mentally and physically healthy.

We see others accurately, but we wear the rose-colored glasses when we rate ourselves, if we are fortunate enough to not to be depressed. In fact, this kind of inflation in self-evaluation may be what helps protect most people from being depressed.

→自己についての正確な評価・認識が、必ずしも心の健康につながるとは限らない。自己評価は、少しぐらい水増しした方が良いみたい。

We are both ants and grasshoppers, and to lose the hot emotional system and live continually dominated by the cool cognitive system in the service of a possible future can become a life story as unsatisfying as its opposite.

...a life lived with too much delay of gratification can be as sad as one without enough of it.

→自制心はとても大事だが、自制心があり過ぎるのも問題。何事も、バランスが大事。

...if you want your children to adopt high self-reward standards, it's a good idea to guide them to adopt those standards and also model them in your own behavior.

How parents and other important figures in a child's life do or do not control themselves ...all profoundly influence the child.

→子供に言うだけでは駄目、自分でも実践しないと。

Self-control involves more than determination; it requires strategies (e.g. If-Then implementation plans) and insights, as well as goals and motivation, to make willpower easier to develop and persistence (often called grit) rewarding in its own right.

...without compelling goals and drive, EF (executive function) can leave us competent but aimless.

→自制心を養うためには、決意するだけではうまくいかない。賢い方法、目標、動機付けが必要。

In life, employing If-Then implementation plans has helped adults and children control their own behavior more successfully than they had imagined possible.

The more often we rehearse and practice implementation plans, the more automatic they become, taking the effort out out effortful control.

→「~という(自分がうまく対処できない)状態が起きたら…する」という計画を予め定めておくことは、自分の行動を上手にコントロールするのにとても有効である。

(例えば、「仕事が重なってパニックになりそうだったら、深呼吸を20回以上する(外の空気を吸ってくる)」「パソコンでソーシャル・メディアを読んでいる時に子供達が話しかけてきたら、子供達と話をするのを優先する」などなど…)

To keep infants' stress levels low, a first step for parents might be to try to reduce their own stress, recognizing that it often increases when newborns arrive.

→子供の自制心を育むためには、新生児の頃からできるだけ子供にストレスを与えないことが肝要だが、その為には、まずは親自身がリラックスする必要がありそう。

To promote children's sense of both autonomy and responsibility, we can help them realize early in life that they do have choices that are theirs to make, and that each choice comes with consequences: good choices - good consequences; bad choices - bad consequences.

→小さい頃に、どのように行動するかは自分で決められること、その行動によって結果・成果が違ってくることを理解させることが大切。

The challenge for the parents is to provide the support their child needs and wants, and then let her work on her own, without taking over and doing if for her.

→サポートはするけど、あくまでサポートに徹する。

Rather than looking for good grades and applauding kids for being "so smart," we can praise them for trying as hard as they can.

...we can help them to understand and accept that failures along the route are part of life and learning, and then encourage them to find constructive ways to deal with such setbacks so that they keep trying instead of becoming anxious, depressed, and avoidant.

→子供の頃は、「成果」ではなく「努力」を褒める。 同様のことは、以前読んだ本、"Einstein Never Used Flash Cards"や"Nurture Shock"にも書かれたので、特に留意する必要がありそう。

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以上、本当に一杯ありました。

読む前は、著者は、もう年配の方だし、学者だし、固い内容で読むのが大変かなぁ…と思っていたのですが、様々な調査、観察、実験結果を引用しながら、とても分かり易く書かれており、興味深く読むことができました(特に後半)。

また、本書には、以前読んだ本"Nurture Shock"に出てきたTools of the Mind、"How Children Succeed"に出てきたKIPP(Knowledge Is Power Program)、"Grit"の著者であるAngela Duckworth氏、"Thinking, Fast and Slow"の著者であるDaniel Kahneman氏等も登場し、それらとの関連性を確認することができたのも良かったです。

子育てに関しても、自分自身の生き方に関しても、参考になりそうな箇所が一杯あると思います。子育て中の方の方が、より興味を持って読めると思いますが、そうでない方にも十分お勧めできる本だと思います。

ご参考までに、日本語訳はこちら…

2017年5月20日 (土)

読みました(ノンフィクション) ~ GRIT

以前読んで興味深かった本"How Children Succeed"に名前が出てきたAngela Duckworth氏が初めて出した本で、書店で日本語訳が売り出されていて、とても気になっていたのですが、やっと読むことができました。

本書では、表題でもある"Grit"とは一体何か、なぜ"Grit"が大事なのか、どのようにしたら"Grit"が育つのかについて、丁寧に分かり易く説明しています。著者が学者と言うこともあり、調査・実験データが豊富に取り上げられていて、とても興味深い本になっています。

自分なりに、要点をまとめてみると…

・人生において何を成し遂げられるかは、"talent(生まれ持っての才能)"にも影響されるが、それ以上に、その人に"Grit"があるかどうかに大きく影響されることが、様々な調査結果から分かってきた。

・"Grit"とは、長期的な目標を達成する為に、熱意を持って、粘り強く努力し続ける力のことである(passion and perseverance)。

・理解の為にあえて単純化すると、 「talent(生まれ持っての才能)×effort(努力)=skill(技量)/skill(技量)×effort(努力)=achievement(成果)」ということであり、talentよりもeffortの影響の方が大きいことが分かると思う。

・"Grit"の程度は、人によって固定された(変わらない)ものではなく、育てることができる。

・"Grit"を沢山持っている人は、①interest(興味)、②capacity to practice(練習できる力)、③purpose(他者への貢献という目的)、④hope(逆境から立ち直れる力)の4つを持っているので、"Grit"を育てるには、その4つの側面を育てるようにすると良い。

・interest(興味)を育てる、つまり興味を深めていく為には、物事の微妙なニュアンスを理解できる、楽しめるようになる必要がある。

・capacity to practice(練習できる力)を育てる為には、漫然と練習するのではなく、自分のできていない点(苦手な点)を把握し、その点を改善する為に集中して繰り返し練習し、少しずつ理想に近づけていく、ということを意識する必要がある。更に、そのような練習(deliberate practice)を習慣(habit)にすることが大切である。

・purpose(他者への貢献という目的)を育てる為には、日々の行動について、どうしたらより他者に貢献できるようになるのか考えてみることが大切である。ロール・モデルになる人を見つけて参考にするのも良い。

・hope(逆境から立ち直れる力)を身につける為には、能力は育てることができる(固定されたものではない)という意識を持つこと、前向き、楽天的な思考を持つよう努めることが大切である。そして、必要なときには、他の人に助け・助言を求めることも大事である。

・子供が"Grit"を身につける為には、高いハードルを設定しながらも、子供に寄り添う(必要に応じて手助けする)ような子育てが必要である。どちらか片方だけではうまくいかない。

・子供が"Grit"を身につける為には、課外活動(extracurricular activities)に参加させるのが有効である。その際は、子供本人が参加する課外活動を決めること、一度決めたら一定期間(数年間)は頑張って続けることが大切である。

・"Grit"を育てる為には、"Grit"の文化を持った組織を見つけて参加するのも有効である。

個人的には、本書を読んで「楽器・英語の練習・学習方法をもうちょっと工夫しよう」「練習・学習を毎日の習慣にしよう」と改めて思いました。あと、「あの人には生まれつき才能があるから…」と羨ましがる癖も、止めようと思いました。

理論的にすっきりしない箇所もありましたが、ここ数年話題になっている"Grit"について分かり易く書かれており、非常に興味深く読むことができました。

洋書としては、文章や単語もそれほど難しくなく、具体例も豊富で、比較的読み易かったです。教育に携わる人にだけではなく、より充実した人生を送りたいと思っている人にもお勧めできる本だと思いました。

ご参考までに、日本語訳はこちら…

2016年12月 4日 (日)

読みました(洋書/ノンフィクション) ~ Teacher Man

Frank McCourtの「Angela's Ashes」「'Tis」が面白かったので、続けて3作目の「Teacher Man」も読んでみました。McCourt氏が70代の時に出版された本です。

本作は、著者の英語教師としての経験を主に綴ったものになります。著者はNew Yorkで、5つの高校(専門高校、エリート校等)と1つのコミュニティ・カレッジで英語や作文を教えてきたのですが、どの場所でも、生徒達の興味を起こさせようと、試行錯誤しながら型にとらわれない授業をしていきます。

例えば…専門高校では、やる気のない生徒達を相手に、親から提出されることになっている遅刻・欠席の理由書(実は、親が書いてくれないので、生徒自身が想像力豊かに代筆している…)を題材に授業をしています。自分が親になったつもりになって、想像力豊かに遅刻・欠席の理由書を書いてみたり、さらに推し進めて、アダムとイブの神様に対する弁解書を書いてみたり、なかなか面白そうです。

例えば…エリート校では、詩の代わりに、料理本を題材に授業をしています。気に入った料理の材料や作り方を朗読してみたり、フルートやオーボエやギター等による伴奏をつけて朗読してみたり、こちらもなかなか面白そうです。

「Playing = Learning」という、よく言われていることだけど、なかなか実践できないことを、著者は試行錯誤しながら直感的に実践してきたのだなぁ…と思いました。

また、著者が素のままで生徒達と向き合っている、自分の経験、気持ちを生徒達に率直に伝えているのも印象的でした。知らないことは知らないと正直に言うし、自分も生徒達から学ぼうとしているし、あまり偉ぶっていないし…生徒達も、そのような著者だからこそ、生身の人間として共感できたのではないかと思いました。McCourt氏のような先生ばかりだったら、それはそれで収拾がつかなくなって大変そうだけど、こういう型にはまらない先生がもっといたらいいのになぁ…と思いました。

長い教員人生の中では、うまくいかないこと、生徒達と意思疎通できないことも一杯あったようですが、生徒達と共に深く学ぶことのできた、心を通わすことの出来た瞬間も一杯あったようで、著者はその思い出をとても大切にしているように感じました。

McCourt氏は、教師なんかやっていられないと思っている時もあるし、自分の人生について常に迷い、あがいているし、博士号の取得には失敗するし、結婚生活もうまくいかないし、皮肉屋だし、不器用だし、充実した人生なんて言葉からは程遠いように思うのですが、そうだからこそ、この自伝がとても魅力的になっているし、深く共感できるのだと思いました。

前2作と同じく、私にとっては単語も文体も難しかったのですが、一つ一つの生徒達とのエピソードが個性的、印象的で、最後まで飽きることなく読むことができました。前2作を面白く読んだので、もうそろそろ飽きてくるかなぁ…と思っていたのですが、そのようなことは全くありませんでした。相変わらず、子供には読ませられないような表現が多々出てきますが…

「なかなか、スマートに、要領よくは生きられないけど、それでも頑張って日々を過ごしていこう。」そう思わせてくる本でした。

最後に、覚えておきたいと思った文章をいくつか…

You don't have to respond to every stimulus.

I don't think anyone achieves complete freedom, but what I am trying to do with you is drive fear into a cornor. (F→F / from FEAR to FREEDOM)

...it is the business of the young to push the old off the planet.

2015年6月 7日 (日)

読みました(洋書/ノンフィクション) ~ The Freedom Writers Diary

この本も、3月の紀伊國屋 梅田本店「洋書大バーゲン」で見つけて購入したものです。15年以上前に書かれた本ですが、前々から「読んでみたいなぁ…」と思っていたので、見つけられて良かったです!

本書では、Woodrow Wilson High School(カリフォルニア州)の新任教師であるGruwell先生の授業を通して、厳しい環境におかれた(或いはレッテルを貼られた)生徒達が、一歩ずつ成長していく(変わっていく)姿が描かれています。

Gruwell先生とその生徒達の日記のみで構成されており、特に生徒達の日記には、各自の抱える厳しい現実、問題、葛藤、そしてGruwell先生の授業から学んだこと等が、率直に綴られています。一つ一つの日記は短いのですが、綴られている現実が、人種差別、貧困、ホームレス生活、虐待、麻薬、銃、暴力、抗争、友人の死など、あまりに厳しく辛い内容なので、続けて読み進めるのがしんどいくらいでした。

生徒達は、Gruwell先生の粘り強い手引きの下、「アンネの日記(The Diary of a Young Girl)」を読んだり、ホロコーストで生き残った人達から直接話を聞いたり、ユーゴスラビア紛争について書かれた「ズラータの日記(Zlata's Diary)」を読んだり、その著者に会ったりしながら、自分の思いを日記に綴り、各自の厳しい現実に向き合います。そして、人種差別、貧困、暴力等の連鎖を断ち切ろうと決意し、実際に行動を起こしていきます。その過程で、Gruwell先生のクラスは、多くの生徒達にとっての、かけがえのない拠り所(家族)になっていきます。

今回も、以前読んだ「Just Mercy」と同様に、アメリカにおいて人種等に対する偏見や差別が根深く残っていることを改めて認識させられました。そして、その偏見や差別を乗り越えようと積極的に行動するGruwell先生と生徒達の行動力(勇気)には、感嘆させられました。また、自ら変わろうとする生徒達からは、これからの人生を頑張る勇気をもらえた気がしました。

難易度としては、一つ一つの日記が短く文章も簡潔なので、比較的読みやすいかと思います。多くの方に読んでいただきたい一冊です!

日本語訳も出ているようですね。

2014年3月29日 (土)

Tools of the Mind という幼児教育プログラムについて(その8)

先日読んだ洋書"Nurture Shock"で取り上げられている、"Tools of the Mind"というアメリカで実践されている教育プログラムについての記事です。

今回は、「遊びながら字を書く」ことについて。

子供たちに、先生の書いた字を真似て字を練習させたり、本屋で買ってきたドリルをやらせたりすると、子供たちが、「先生のように上手く書けないよ…」とか「お手本のように上手く書けないよ…」といった態度を示して、字を書くのを嫌がることが、往々にしてあるかと思います。

しかしながら、

お店屋さんごっこ(ピザ屋さん、アイスクリーム屋さん、おそば屋さん、などなど…)で店員さんの役をしている子供に「メモ用紙」と「ペン」を渡しておきます。店員さんは、注文を覚える為に何かしなくてはならないので、とにかく、自分の出来る範囲でメモをとろうとします。つまり、言われなくても、自ら進んで字を書こうとするのです。(きっと、最初の頃は、とても読める字ではないでしょうが…)

大好きな、おじいちゃん、おばあちゃん、お友達、先生等からお手紙をもらうと、とても返事を書きたくなって、頑張ってお手紙を書こうとします。この場合も、言われなくても、自ら進んで字を書こうとするのです。

他にも、「遊びながら字を書く」ケースは、いろいろあるかと思います(学校ごっこ、などなど)。

このように「遊びながら字を書く」ことは、字を書こうとするモチベーションが非常に高いので、効果的に字を学習・練習することができると思います。「遊びながら字を書く」ことを何度も繰り返しているうちに、だんだんと字が上手くなってきます。

うちの姉妹には、一応、本屋で公文の練習帳を買ってきてやらせてはいるのですが、それよりも、遊びながら字を書いていることのほうが、ずーっと多いです。遊びながら字を書いているうちに、だんだんと字が上手くなっていく(読めるようになってくる)速さには、目を見張るものがあり、時には本当に驚かされます。

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以上で、"Tools of the Mind"というアメリカで実践されている教育プログラムについての記事は終わりです。せっかくまとめたので、これらの実践的知識を、少しでも育児に生かしていければと思います。

2014年3月24日 (月)

Tools of the Mind という幼児教育プログラムについて(その7)

先日読んだ洋書"Nurture Shock"で取り上げられている、"Tools of the Mind"というアメリカで実践されている教育プログラムについての記事です。

今回は、この教育プログラムで行われている、「間違い直しの方法」について書いてみたいと思います。

方法としては、

先生は、間違った箇所をすぐに指摘しない。

先生は、間違いが含まれている「ページ」や「列」を指摘し、子供たちが自分自身で間違っている箇所を見つけるよう仕向ける。

別の方法としては、子供たちに「正解」と「自分の回答」とを比べさせ、やはり、自分自身で間違っている箇所を見つけるよう仕向ける。また、子供たちが二人一組になって、お互いに相手の回答を採点する方法もある。

といった感じです。

このような方法で「間違い直し」をすることにより、子供たちは、自分の「うまくできる所」と「うまくできない所」に自分自身で気付くことができるようになります。また、集中力も身に付きます。

そして、このような能力は、小学生での学習の際にとても重要になるとのことです。

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我が家では、上の娘(小学校低学年)に対してこの方法を用いていますが、幼稚園生にも効果的とのことなので、そのうち下の娘に対しても試してみたいと思います。

つづく(おそらく次回で最後…)

2014年3月23日 (日)

Tools of the Mind という幼児教育プログラムについて(その6)

先日読んだ洋書"Nurture Shock"で取り上げられている、"Tools of the Mind"というアメリカで実践されている教育プログラムについての記事です。

今回は、この教育プログラムで行われている、「字の学習方法」について書いてみたいと思います。

方法はいくつかありまして、

先生が、4つ程度の違った書き方(かたち)で字を書いて、子供たちに一番良い字はどれか選んでもらう。

子供たちが二人一組になって、お互いに、相手が書いた字の中で一番良い字に丸をつける。

子供たちが、自分自身が書いた字の中で一番良い字を選び、丸をつける。

といった感じです。

単純に字の練習を繰り返すだけでなく、このような学習方法を取り入れることにより、子供たちは、次第に、自分の「うまく書ける所」「うまく書けない所」が分かるようになります。その結果、子供たちは、上手に書くためにはどこに注意・集中すれば良いのかも分かるようになる、とのことです。

そして、このような、自分の「うまくできる所」と「うまくできない所」に自分自身で気付くことができる能力は、小学生での学習の際にとても重要になるとのことです。

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この学習方法を我が家でやってみた時は、娘(年少)は、なんとなくですが、「一番良い書き方」は分かるようでした。ただ、その「一番良い書き方」を意識して字を書くのは、ちょっとまだ難しかったようです…

つづく…

2014年3月19日 (水)

Tools of the Mind という幼児教育プログラムについて(その5)

先日読んだ洋書"Nurture Shock"で取り上げられている、"Tools of the Mind"というアメリカで実践されている教育プログラムについての記事です。

今回は、この教育プログラムで行われている、字を覚えながら"Private Speech"も身に付ける方法について書いてみたいと思います。

やり方は、

最初、子供たちに、「書き方」を大声で言いながら、字を練習するように指示する。

※本書で挙げられている例では、大文字の「C」を"Start at the top and go around."と大声で言いながら書いています。

※平仮名であれば、例えば「ろ」だと「よ~こ、ななめした、ぐるりん」といった感じ、「ち」だと「よ~こ、た~て、ぐるりん」といった感じ、「け」だと「た~て、よ~こ、た~て」といった感じでしょうか???

数分書いているうちに、ほとんどの子供たちは、次第に(大声ではなく)ぶつぶつと呟きながら書くようになっている。

もう数分書いているうちに、ほとんどの子供たちは、自然と、(声に出さず)頭の中で言いながら(="Private Speech")書くようになっている。

といった感じです。

このような字の練習をすることで、自ら"Private Speech"ができるようになり、その結果として、頭の中で考えてから行動できるようになる(衝動的な行動をしなくなる)とのことです。自分の行動をコントロールできるようになる、ということでしょうか。

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先日、このような字の練習方法を、娘(年少)と一緒にやろうとしたのですが、字を覚えるのがまだちょっと大変そうで、うまくいきませんでした。また数ヶ月してから、娘のやる気がありそうな時にでもやってみようかなぁ…

つづく…

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