ビジネス

2016年7月10日 (日)

読みました(洋書/ビジネス) ~ The Essential Drucker

ビジネス書をよく読むのですが、まだDrucker氏の本を一冊も読んだことがなかったので、本書を読んでみました。1940年代から1990年代に書かれた同氏の数多く著作からエッセンスを抜き出したような本で、同氏のマネジメント論を広く(浅く?)知ることができるようになっております。

文章や語彙が私にとっては少々難しく、読むのに時間がかかりましたが、事例が豊富なので、最後まで飽きずに読み通すことができました。また、日本のことや、事例としてソニーやホンダといった会社も出てくるので、興味深く読むことができました。26の章に分かれているのも、細かく区切りをつけながら読むことができて良かったです。

Drucker氏のマネジメント論の「全体像」を把握する為の本なので、少々物足りなく感じる時もありますが、「なるほどなぁ…」「気をつけたいなぁ…」と思う箇所が沢山ありました。いくつか挙げてみますと…

1. Management as social function and liberal art より

Not to innovate is the single largest reason for the decline of existing organizations. Not to know how to manage is the single largst reason for the failure of new ventures.

→勤め先について言えば前者に注意しないと。ただ、新規事業については後者か…

Management is about human beings. Its task is to make people capable of joint performance, to make their strengths effective and their weaknesses irrelevant.

→「個々人の弱みを無意味にする」というのが大切かと思います。

5. Social impacts and social problems より

Healthy businesses require a healthy, or at least a functioning, society. The health of the community is a prerequisite for successful and growing business.

→当たり前のことなのですが、ついつい忘れがち。CSRの根底にある考えでしょうか。

8. Management by objectives and self-control より

The hierarchical structure of management aggravates the danger. What the "boss" does and say, his most casual remarks, habits, even mannerisms, tend to appear to subordinates as  calculated, planned, and meaningful.

→どのようなレベルであれ、リーダーが常に意識しなければならないこと。一方的なコミュニケーションに陥っていないか、常に謙虚な検証が必要。

To "control" everything is to control nothing. And to attempt to control the irrelevant always misdirects.

→「木を見て森を見ず」ということでしょうか。審査部門として陥りがちなので、要注意。

9. Picking people - the basic rules より

Usually every man who was good at this task had serious weaknesses in other areas.

→他人もそうだし、自分もそう。

One executive's judgment alone is worthless. Because all of us have first impressions, prejudices, likes, and dislikes, we need to listen to what other people think.

→これも、あらゆるレベルのリーダーが常に意識しなければならないこと。常に謙虚な姿勢で。

14. Focus on contribution より

The effective person focuses on contribution. He looks up from his work and outward toward goals. He asks, "What can I contribute that will significantly affect the performance and the results of the institution I serve?"

→"What can I contribute?"という問いかけを、常にしていきたいと思いました。

The most common cause of failure is inability or unwillingness to change with the demands of a new positon. The knowledge worker who keeps on doing what he has done successfully before he moved is almost bound to fail.

→なかなか耳の痛い話ですが、その通りなんでしょうね。

15. Know your strengths and values より

Waste as little effort as possible on improving areas of low competence. Concentration should be on areas of high competence and high skill. It takes far more energy and far more work to improve from incompetence to low mediocrity than it takes to improve from first-rate performance to excellence.

→「苦手分野を克服しなくては」と考えがちですが、それは非効率なのか…意外でした。

16. Know your time より

Actually, all one has to do is to learn to say no if an activity contributes nothing to one's own organization, to oneself, or to the organization for which it is to be performed.

→断る勇気が必要。

But above all, meetings have to be the exception rather than the rule. An organization in which everybody meets all the time is an organization in which no one gets anything done.

→これも耳の痛い話ですが、気をつけないと…

Even one quarter of the working day, if consolidated in large time units, is usually enough to get the important things done. But the three quarters of the working day are useless if it is only available as fifteen minutes here or half an hour there.

→忘れがちですがとても大事なこと。「電話」や「メールのお知らせ」でいちいち中断されていては、まともな仕事ができないのは当たり前。

17. Effective decisions より

Whenever one has to judge, one must have alternatives among which to choose. A judgment in which one can only say yes or no is no judgment at all.

→対案は、しっかり用意しておかないとなぁ…

21. The second half of your life より

For where there is success, there has to be failure. And then it is vitally important for the individual - but equally for the individual's family - that there be an area in which the individual contributes, makes a difference, and is somebody. That means having a second area, whether a second career, a parallel career, a social venture, a serious outside interest, anything offering an opportunity for being a leader, for being respected, for being a success.

→組織としてではなく、個人として大事なこと。将来的に、ますます大切になってくる観点だと思います。

24. The coming of entrepreneurial society より

They can no longer assume that what they have learned as children and youngsters will be the "foundation" for the rest of their lives. It will be the "launching pad" - the place to take off from rather than the place to build on and to rest on.

→一生、学び続けて、変わり続けなくてはならない、ということでしょうか。

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また、全体を通して、「お客様(customer)を中心に」という考えが、随所に、繰り返し出てきたのが印象的でした。

Finally, the single most important thing to remember about any enterprise is that results exist only on the outside. The result of a business is a satisfied customer.

It is the customer who determines what a business is. It is the customer alone whose willingness to pay for a good or for a service converts economic resources into wealth, things into goods.

Business are not paid to reform customers, They are paid to satisfy customers.

All the strategies discussed in this section have one thing in common. They create a customer - and that is the ultimate purpose of a business, indeed, of economic activity.

But there are no "irrational customers." As an old saying has it, There are only lazy manufacturers. The customer has to be assumed to be rational. His or her reality, however, is usually quite different from that of the manufacturer.

It also means that the center of gravity, and the center of power, will be the customer. In the last thirty years, the center of power has shifted from the supplier, the manufacturer, to the distributor. In the next thirty years, it will certainly shift to the customer - for the simple reason that the customer now has full access to information worldwide.

本書には、最近のビジネス書に書かれていることが沢山書かれており、Drucker氏の考えは現在のマネジメント論の基礎になっているのだなぁ…としみじみ思いました。少々読みにくいかもしれませんが、一読の価値のある本だと思います。

2016年4月28日 (木)

読みました(洋書/ノンフィクション) ~ Unfinished Business

渡辺由佳里さんの洋書ファンクラブ紹介記事を読んで、「いつか読もう!」と思っていた本です。仕事でバタバタしていてなかなか読めなかったのですが、やっと読むことができました。

国際関係の専門家・学者であり、Hillary Clintonの下で重責を担ったこともある著者が、自己の経験を踏まえつつ、「女性と男性とが同等に活躍できる社会を実現する為にはどうしたらよいか?」について、考えを述べている本です。

同じテーマについて書かれた本としては、FacebookのCOOであるSheryl Sandbergの「Lean In」が有名ですが、同書が客観的なデータに基づきつつも、意図的に著者の感情を前面に出して書かれていたのと対照的に、本書は、感情を前面に出さず、冷静且つ丁寧に主張が展開されていると思いました。

まず、本書の「Part I」では、私たちが女性の社会進出に対して持っている典型的な考え方、例えば、

・女性でも、とにかく仕事に熱心に取組みさえすれば、すべてを手に入れられる。

・女性は、サポートしてくれる適切な人と結婚すれば、すべてを手に入れられる。

・子供には母親が必要である。

・男性の仕事は稼ぐことである。

・女性の社会進出が進まないのは、女性自身の問題である。

・長時間働く人が、一番良い仕事をしている。

といったような考え方について丁寧に検証し、「必ずしもそうとは限らないのでは?」と問題提起しています。

そして、「Part Ⅱ」では、上記のような典型的な考え方に囚われることなく、少し違った角度から考えてみる必要があるとして、

・女性と男性の真の平等を実現する為には、会社のトップとして活躍しているような女性だけではなく、すべての女性の置かれている状況を見ることが肝要である。

・世間一般で、「仕事すること」に比べて「世話すること(子育て、介護、家事)」が軽んじられていることが、女性の置かれている状況を厳しいものにしている。

・「世話すること」は「仕事すること」と同様に、様々なスキル(忍耐力、柔軟性、共感力等)を必要とするのであり、骨の折れる大変なことである。

・女性だけでなく、男性の選択肢も広げていく必要がある。いわゆる「男らしさ」に縛られることなく、自分の気持ちに忠実に生きられるようにする必要がある。

・女性は、男性が世話(子育て、介護、家事)をする際には、一つ一つ指示を出したりせず、男性のやり方に任せた方がよい

といったような視点を持つことが大切だと、主張しています。

その上で、最後の「Part Ⅲ」において、女性と男性の真の平等を実現する為に採るべき具体的方策として、

①話し方を変えることで、考え方も変えていく。

・母親がしても当然と思われるようなこと(平日の学校行事に出席する等)を父親がしたぐらいで、過剰に賞賛するのは良くない。

・ビジネスの世界で、女性を紹介する時には「2児の母親でもあります」というように紹介する一方で、男性を紹介するときには父親としては紹介しない、というのもよろしくない。

・職場において、子育て、介護、家事等に関することを正直に話すべきである。

・女性だけでなく男性に対しても、将来どのように家庭と仕事のバランスをとるつもりなのか訊くべきである。

②今後どのように仕事をしていくか、予め計画しておく(計画通りにはいかないが…)。

・将来の一時期、「世話すること(子育て、介護、家事)」に重きを置くために、より時間に融通の効く働き方をしたり、あまり大変でない仕事についたりすることを、予め想定しておく。

・「世話すること」の為に完全に仕事を辞めてしまうのはよくない。パートタイムでもいいので、将来につながる仕事を続けていくべきである。

・家庭と仕事の両立が立ち行かなくなった時に、慌てて対策を考えるのではうまくいかない。

・普段から、いざという時にサポートしてくれる人的ネットワークを構築するよう努めることが大切である。

③職場を変えていく。

・フリーランス、契約社員といったような働き方は、地位が不安定になるが、時間に融通が効くことが多いので、世話(子育て、介護、家事)をしながら働く人にとっては、考慮すべき働き方である。

・インターネット等を使って在宅勤務できるような会社も増えてきており、世話をしながら働く人にとって好ましい動きである。

・世話をしながら働くために会社に求めることを、まずは上司等に伝え、そのようなニーズがあることを会社に分かってもらう必要がある。

・長時間勤務は生産性が下がることを認識し、職場にいる時間ではなく、仕事の成果で評価されるように変えていかなくてはならない。

・「世話すること」に必要なスキル(忍耐力、柔軟性、共感等)は、仕事において必要なスキルでもあるので、世話しながら働くことをもっと評価する必要がある。

④「世話すること」を大切にする市民になる。

・世話(子育て、介護、家事)している人達をサポートするのは、個々の会社だけでは限界があるので、そのような政策を政治的に実現していく必要がある。

・現在はまだ、「世話すること」を担っている人の多くは女性なので、より多くの女性を政治の世界に送り込む必要がある。

・「世話すること」は、次世代を育てることでもあり、国の将来を左右するような極めて重要なことであり、国として「世話すること」に積極的に投資していく必要がある。

といったことを提唱して、本書を終えています。

本書は、先ほど挙げた「Lean In」でにおける、

・一人でも多くの女性が、もっともっと積極的に前に出て、組織、政治等のリーダーとなって、社会を変えていく必要がある。

・仕事と家庭の両立について若いうちから考え過ぎて、初めから一歩引いてしまっては駄目である。

といった主張とはまた違った視点から書かれていて、なかなか興味深く読むことができました。

「世話すること(子育て、介護、家事)」を今よりもっと大事にする(評価する)意識が世間一般に浸透すれば、女性も男性も、世話(子育て、家事、介護)しながら働きやすくなり、その結果として、より良い人生が送れるようになるのだと思います。

短い期間でそのような変化を起こすのは、正直難しいとは思いますが、まずは自分のできる範囲から、そのような変化を起こしていきたいなぁ…と思いました。

「Lean In」ほどは読みやすくないですが、女性と男性の平等についてじっくり考えることのできる良書だと思います。

2016年2月 7日 (日)

読みました(洋書/ビジネス) ~ The 7 Habits of Highly Effective People

20年くらい前に「7つの習慣」というタイトルで翻訳出版され話題になったビジネス書です。渡辺由佳里さんの「洋書ベスト500」にも掲載されており、タイム誌が選ぶ「最も影響力のあるビジネス書」の一冊とのことです。原著は25年以上前の出版になりますので、今更な気もしたのですが、古本を見つけたので読んでみました。

良い人間関係を築いたり、豊かな人生を過ごす為には、小手先だけの(表層的な)テクニックを実践するだけでは効果は長続きしない。自分が本当に大事にしている原則・信条を見つめ直し、それに基づいて次の7つの習慣を実践していく必要がある、といった主張をしている本だと思います。

その7つの習慣とは…

<Private Victory / Independence>
1 Be Proactive - Principles of Personal Vision
2 Begin with the End in Mind - Principles of Personal Leadership
3 Put First Things First - Principles of Personal Management

<Public Victory / Interdependence>
4 Think Win/Win - Principles of Interpersonal Leadership
5 Seek First to Understand, Then to Be Understood - Principles of Empathetic Communication
6 Synergize - Principles of Creative Cooperation

<Renewal>
7 Sharpen the Saw - Principles of Balanced Self-Renewal

最初の3つ(1-3)は、個人の習慣(心がけ)について。次の3つ(4-6)は、対人関係における習慣(心がけ)について。最後の1つ(7)は、他の6つの習慣(1-6)の見直し・更なる向上について。

留意点としては、対人関係における習慣(4-6)を実践する為には、ある程度個人の習慣(1-3)が出来ていないと、なかなかうまくいかないとのこと。(Private Victory precedes Public Victory.)

以下、それぞれ習慣について、自分なりの解釈を簡潔に書いてみたいと思います。

1 Be Proactive

外部からの刺激(stimulus)に対しては、感情的・衝動的・条件的に反応(response)しがちである。「外部からの刺激(stimulus)」と「自分の反応(response)」の間には隙間があり、その隙間で創造力・良心・意志等を働かせて、自分の反応をコントロール(選択)できるようになることが大切である。

また、世の中には、自分の行動だけではどうにもならない(変えられない)ことが多いが、自分が影響を与えられる部分(circle of influence)は必ずあるので、その部分に対して積極的に働きかけ、その影響を与えられるを部分を少しでも広げていくことが大事である。

何か失敗をした時、それを嘆いたり、それに腹を立てたりするのではなく、失敗を認め、修正し、そこから学ぶのがproactiveな姿勢であろう。

2 Begin with the End in Mind

人生の終わりに(自分の葬式の時に)、家族・友人・同僚等からどのような人だったと言われたいか、まずはじっくり考えてみよう。そして、それを念頭におき、自分が本当に大事にしている原則・信条を見つめ直し、それに基づいて日々行動するようにしてみよう。自分の原則・信条をはっきり認識していないと、日々忙しく努力しても、間違った方向へ進んでいってしまう。

家庭・職場・友人関係等において、自分の本当になりたい姿、本当にしたい事を、自分の憲法(personal mission statement, personal constitution)として書き記してみよう。書くことで、それらが明確になる。

3 Put First Things First

「至急」かつ「大事」なことは、誰でもまず最初にやると思うが、「大事」ではあるが「至急ではない」ことは、先延ばししがちである。後者を実践することは、将来の生産能力(production capability)を向上させることにつながるし、ひいては前者の事態(緊急事態)を減らすことにもつながるので、長期的な視点から、後者について日々実践する時間を意識的に設けることが大事である。

その為には、「至急」ではあるが「大事ではない」ことを、他の人に任せたり、(笑顔で)断ったりすることも必要である。

4 Think Win/Win

我々は、小さい頃から他の人と比較され続けているので、「勝つか負けるか(Win/Lose・Lose/Win)」という考え方が身についてしまっている。しかしながら実際には、Win/Winという考え方に基づき、お互いの意見を持ち寄り、双方にとってメリットのある方策を見出すことも可能なのである。

その為には、相手の意見・気持ちをよく理解すること、勇気を持って自分の意見・気持ちを相手に伝えること、その両方が必要である。

Win/Lose・Lose/Winな関係は長続きしないが、Win/Winな関係であれば双方にとってメリットがあるので、長続きする。また、Win/Winな関係になれないのであれば、身を引く(関係を止める)という選択肢も考えるべきである。

5 Seek First to Understand, Then to Be Understood

人から相談を受けたり、人が意見を述べたりすると、その話をしっかり聞かないうちに(理解しないうちに)、自分の経験・信条等に基づいて性急にアドバイス、反論等をしてしまうのは、よくあることである。また、相手が異なる意見である時には、「いくら言っても分からない奴だなぁ…」と思ってしまいがちである。

そんな時は、先ずは自分の意見は横に置いておいて、相手の意見・気持ちに辛抱強く耳を傾け、「心から」理解するように努めてみよう。そうすることにより初めて、適切なアドバイスや意見交換ができるようになるのである。

また、そうすることにより、時間はかかるかもしれないが、相手が「理解してもらえた!」と感じて心を開くようになり、こちらの意見にも耳を傾けるようになるのである。どちらかが先に理解を示さなければ、より良い関係は築けない…

6 Synergize

お互いに信頼関係があれば、協同して新たな解決策を模索しているうちに、一人(片方)だけでは思いつかなかったような、何倍も素晴らしいアイデアが生まれることが多い。一方、お互いが疑心暗鬼の状況では、そのようなことは望めない。

一個人の認識には限界があり、どうしても偏った見方になってしまうので、他の人から異なった意見を聞くことが大事なのである。

7 Sharpen the Saw

上記の6つの習慣について、自分が大事にしている原則・信条に則しているか、継続的に(終わることなく)見直していく必要がある。

その為には、健康的な食事、適度な運動をし(①physical)、自分が本当に大事にしていることを再確認し(②spiritual)、本を読み、自分の考えを書き記し、学び(③mental)、対人関係において上記4~6の習慣が実践できているか再確認する(④social/emotional)必要がある。その際には、上記4つの側面(①~④)について、偏らず、バランスよく実践していくことが大切である。

上記の6つの習慣はお互いに密接に関係しているので、1つの習慣がより良くなることにより、他の習慣にも好影響を与えるのである。

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読む前までは、失礼ながら「ハウツー本かなぁ…」なんて漠然と思っていたのですが、上記のとおり、もっともっと奥の深い本でした。具体例を沢山挙げ、分かり易い言葉で書かれており、日々の生活で実践しやすくなっていると思います。一読の価値が十分ある本だと思います。

会社でも家庭でも、それ以外でも、上記の7つの習慣を意識して、日々生活していきたいと思いました。

最後に、今更な感じはありますが、邦訳を紹介しておきます…

2015年10月24日 (土)

読みました(洋書/ビジネス) ~ WORK RULES!

Googleの人事部門(People Operations)のトップ(Senior Vice President)であるLaszlo Bock氏が、Googleの様々な人事制度(採用、福利厚生、教育、評価、報酬…)につい て述べた本です。他の会社・組織にも参考にしてもらおうという意図で、分かり易く書かれていると思います。

以下、本書の内容を、備忘録的に、章ごとに、ごく簡潔にまとめてみました。

1. Becoming a Founder

創業者(創設者)のつもりで人事制度を考えよう。

2. "Culture Eats Strategy for Breakfast"

社員に仕事の意義を気づかせよう。そして、自由を尊重する文化を作るためには、社員一人一人を信頼して、自分が不安になるくらいの裁量権を与えよう。

3. Lake Wobegon, Where All the New Hires Are Above Average

採用には十分な予算を割り当て、じっくり時間をかけ、(ある重要な面で)自分よりも優れている人だけを採用しよう。妥協は禁物。

4. Searching for the Best

採用に当たっては、会社・組織の求める資質、能力等を明確にした上で、優れた人材の情報を、社員からの紹介をはじめ、様々な手段で集めよう。

5. Don't Trust Your Gut

採用に当たっては、候補者の同僚や部下になる人にも参加してもらい、候補者をできるだけ客観的な方法・手法で評価しよう。また、候補者に我々の仕事の意義等を伝えて、一緒に働きたい気持ちになってもらおう。

6. Let the Inmates Run the Asylum

上司から肩書きや権限を取り去り、社員同士が活発に議論できる環境を作ろう。そして、社員自らが、上司の意見(指示)に従うのではなく、データ(実験結果等)に基づいて意思決定できるような環境を作ろう。

7. Why Everyone Hates Performance Management, and What We Decided to Do About It

社員の評価に当たっては、その人の目標を正しく(能力より高めに)設定した上で、同僚や他部署の人の意見もよく聞いて、できるだけ公平に評価しよう。また、報酬(評価)の話と教育(人材開発 )の話は一緒くたにせず、別の機会に行おう。

8. The Two Tails

会社全体のパフォーマンスを上げる為には、積極的に「評価の低い人」をトレーニングし、場合によっては別の役割を与えよう。また、「評価の高い人」の優れている点(資質)を観察し、今後の社員教育に生かそう。

9. Building a Learning Institution

社員の教育は、理解・実践し易いように、細分化して(テーマを絞って)繰り返し実施し、その後に必ず効果を測定しよう。また、優秀な社員にも先生になってもらおう。

10. Pay Unfairly

秀でた成果を出す人に対しては、理由をきちんと説明した上で、その成果に見合った高額の報酬を与え、評価しよう。また、お互いの成果を祝い、お互いに感謝し合える社内文化を作 ろう。

11. The Best Things in Life Are Free (or Almost Free)

社員がより効率的に、協同して、創造的に仕事ができるようなサービスを提供しよう。やり方を考えれば、それほどコストはかからない。

12. Nudge...a Lot

社員がより幸せで健康に働けるように、社員をそっと後押しするような(意識せずに影響されてしまうような)仕組みをいろいろと考えよう。

13. It's Not All Rainbow and Unicorns

様々な制度を試していれば失敗することもある。そんな時は失敗を素直に認め、様々な人から率直な意見を聞いた上で、制度を修正しよう。

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本書で特に肝に銘じたいと思った箇所は、2章の最後(まとめ)で出てきた、

Give people slightly more trust, freedom, and authority than you are comfortable giving them. If you're not nervous, you haven't given them enough.

という文章です。なかなか難しいですが、意識して実践していきたいと思いました。

Googleという会社は、世界的に、最も働き甲斐のある職場の一つと評価されているだけあって、既存の概念にとらわれない、独創的な人事制度を採用しているなぁ…と思いました。また、新たな人事制度を採用する際には、まずは少数のグループで実施(実験)してみて、データで効果を確認してから全社的に実施しているところは、「さすが、データを重視するGoogleらしいやり方だなぁ…」と改めて感心いたしました。

一方で、やはり、Googleの資金力、オープンな議論を尊重する文化、人材の厚みがあってこそ、初めてこれらの人事制度が可能になる、という面は否めないと思いました。また、依然として終身雇用が一般的である(転職が一般的ではない)日本には、なかなか当てはまらなそうな箇所もありました。

そうは言っても、本書には、日本の会社にも参考になりそうな内容が沢山含まれていると思います。他の会社・組織でうまくいっている効果のありそうな制度・手法を、自社でも少し試してみて、効果が確認できたものから一つずつ採用していく、そういった地道なプロセスが大切なのではないか、と思いました。

会社・組織の人事制度を考える立場にある人、人事制度に興味がある人にとっては、新鮮な視点が得られる良書だと思います。

邦訳はこちら…

2015年2月28日 (土)

読みました(洋書/ノンフィクション) ~ THE INFORMANT

先日、米国司法省(反トラスト局/Antitrust Division)の方の講演を聴いた時に紹介されていた本です。映画にもなっていますが、本の方が良いとのことだったので読んでみました。

主にリジンという飼料添加物をめぐる国際カルテル事件(同業者間での価格・販売数量の調整・密約)に関するノンフィクションです。

米国1社(ADM)、日本2社(味の素、協和発酵)、韓国2社(Sewon、Cheil)の計5社によるカルテル事件なのですが、そのうちADMの役員の一人(Mark Whitacre氏)がある事件を切っ掛けにFBIの協力者となります。FBIは、同氏の協力の下、カルテルが行われている会議をビデオ撮影・録音すること等により、証拠を集めていきます。そして、その証拠に基づき、司法省(反トラスト局)が家宅捜索に踏み切るのですが、その後、Whitacre氏が別の横領事件等に関与していることが疑われるようになり、その影響を受けて、カルテル事件の捜査も予想していなかった方向へと展開していきます。

本書は、当時の隠し撮りしたビデオや録音、各種文書、そして100人以上の関係者へのインタビューを基にして書かれたノンフィクションであり、当時の出来事や、関係者の人物像等が丹念に描かれていて、John Grishamの小説にひけをとらないくらい面白かったです。読んでいて「本当にノンフィクションなの?フィクションでは?」と思うくらいでした。

また、当時、Whitacre氏がJohn Grishamの"The Firm"の映画を観ていたこと、本事件の捜査中に、司法省(反トラスト局)が別のカルテル事件でGE(General Electric)に完敗していたこと等、個人的に興味深い箇所が沢山ありました。その他、FBIと司法省(反トラスト局)との意見対立や、司法取引における被告側弁護士と司法省(反トラスト局)との駆け引きも、読んでいて興味深かったです。

「カルテル」というあまり一般的ではない分野の事件を扱ったものですし、ページ数も500頁以上ありますので、なかなか手が伸びにくい本かと思いますが、思っていたよりもずっと面白く、当初はいつものペースで1ヶ月ぐらいかけて読み終えるつもりだったのが、話に引き込まれて2週間で読み終えてしまったくらいなので、お勧めできる本だと思います。

最後に、FBIが隠し撮りしたビデオがYouTubeにありましたので、以下にご紹介しておきます。

1993.7.13

1993.10.25

1994.3.10

1995.1.18

2015年1月29日 (木)

読みました(洋書/ビジネス) ~ How to Win Friends and Influence People

1930年代に書かれた自己啓発の本で、邦訳もされているとても有名な本なので、今までなんとなく避けていたのですが、会社の同僚の勧めもあって読んでみました。渡辺由佳里さんの「洋書ベスト500」でも紹介されています。

古い本ですので、「時代遅れな感じがするのかなぁ…」と思いながら読み始めたのですが、最近のビジネス書でも書かれているようなポイント(大事なこと)が、沢山記載されていて、ほとんど古さを感じませんでした。「昔も今も、本質は変わらないのだなぁ…」と改めて思いました。

本書に記載されているポイントを実践してみた人たちの成果が、具体的に沢山紹介されているので、とても興味深く読むことができました。また、具体的事例は、ビジネス上の人間関係に関するものが最も多いのですが、家族関係についての事例も数多くあり、最後まで飽きずに、楽しく読むことができました。

各章のまとめを記載しますと…

Part 1 : Fundamental techniques in handling people

1 Don't criticise, condemn or complain.

2 Give honest and sincere appreciation.

3 Arouse in the other person an eager want.

Part 2 : Six ways to make people like you

1 Become genuinely interested in other people.

2 Smile.

3 Remember that a person's name is to that person the sweetest and most important sound in any language.

4 Be a good listener. Encourage others to talk about themselves.

5 Talk in terms of the other person's interests.

6 Make the other person feel important - and do it sincerely.

Part 3 : Win people to your way of thinking.

1 The only way to get the best of an argument is to avoid it.

2 Show respect for the other person's opinions. Never say, 'You're wrong.'

3 If you are wrong, admit it quickly and emphatically.

4 Begin in a friendly way.

5 Get the other person saying 'yes, yes' immediately.

6 Let the other person do a great deal of the talking.

7 Let the other person feel that the idea is his or hers.

8 Try honestly to see things from the other person's point of view.

9 Be sympathetic with the other person's ideas and desires.

10 Appeal to the nobler motives.

11 Dramatise your ideas.

12 Throw down a challenge.

Part 4 : Be a leader

1 Begin with praise and honest appreciation.

2 Call attention to people's mistakes indirectly.

3 Talk about your own mistakes before criticising the other person.

4 Ask questions instead of giving direct orders.

5 Let the other person save face.

6 Praise the slightest improvement and praise every improvement. Be 'hearty in your approbation and lavish in your praise.'

7 Give the other person a fine reputation to live up to.

8 Use encouragement. Make the fault seem easy to correct.

9 Make the other person happy about doing the thing you suggest.

どれもこれも覚えておきたいことばかりなのですが、特に心に留めておきたいと思ったのは、次のポイントです。

Become genuinely interested in other people.

Be a good listener. Encourage others to talk about themselves.

→もっともっと、人の話に耳を傾けるようにしてみたいと思います!

Show respect for the other person's opinions. Never say, 'You're wrong.'

→間違いを見つけると直ぐに指摘したくなる悪い癖があるので、もっと相手の立場に立って発言をするようにしたいと思います!

また、何よりも大事なのは、上記に書かれているポイントを「本心から」実践しなければならない、ということ。表面上だけの行動はすぐに見破られてしまう、とのことなので…

多少難しい単語は出てきますが、分かりやすい文章で書かれていて読みやすいので、お勧めできる洋書です。非常に実践的で、読んだ次の日から実践できそうな内容が沢山書かれておりますので、ぜひ読んでみて下さい。

2014年7月19日 (土)

読みました(洋書/ビジネス) ~ The Leadership Challenge

この本は、会社の同期から薦められた、リーダシップに関する本です。初版刊行から25年も経っていますが、事例などが随時アップデート されており、古臭さは全く感じませんでした。現在は「第5版」。

著者は長年に亘り、卓越したリーダー達から話を聴いたり、彼らの行動を分析したりしており、その上で、「優れたリーダーは、次の5項目The Five Practices of Exemplary Leadershipを実践している」との結論に至っております。

1 Model the Way

2 Inspire a Shared Vision

3 Challenge the Process

4 Enable Others to Act

5 Encourage the Heart

そして、この5項目一つ一つについて、事例を紹介しながら、具体的にどのようなことを実践していったらよいか、分かり易く解説して います。

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1 Model the Way

まず、自分自身の価値観を明確にした上で、その価値観を自分自身の言葉で語れるようにする。

Say it in your own words.

次に、仲間の価値観にも耳を傾け、共通の価値観を確認する。

It's vitally important that leaders and constituents arrive at consensus on shared values, because once they are articulated, those values become a pledge to employees, customers, clients, business partners, and other constituents.

そして、まずは自分自身が、その共通の価値観を実践する(行動で示す)。また、自分が本当に実践できているか、謙虚に仲間に意見を求める。

It's your responsibility as a leader to keep asking others, "How am I doing?" If you don't ask, they're not likely to tell you.

2 Inspire a Shared Vision

まず、将来、何を成し遂げたいのか、しっかりとしたビジョンを持つ。

Leaders need to spend considerable time reading, thinking, and talking about the long-term view, not only for their specific organizations but also for the environments in which they operate.

次に、そのビジョンについて仲間と語り、仲間と共有できるビジョンを作り上げる。

Involve others in crafting what could be possible; don't make it a top-down process.

Weave together your own hopes and dreams with those of your constituents.

そして、熱意を持って、そのビジョンの実現に向けた協力を仲間に求める。

People aren't going to follow someone who's only mildly enthusiastic about something.

3 Challenge the Process

まず、挑戦の機会を積極的に受け入れる。

Put yourself in new situations; take on a new project at least once a quarter.

次に、他の人、外部の人に積極にアイデアを求めるようにする。

...keep in mind that the most innovative ideas are most often not your own and not in your own organization. They're elsewhere, and the best leaders look all around them for the places in which breakthrough ideas are hiding.

...when the pressures for profit and efficiency are greatest, these managers may even mistakenly act to eliminate or severely limit the very things that provide the new ideas they need to weather the storms of uncertainty - by cutting the budgets for travel and training, for example.

そして、リスクをとって、いろいろなアイデアを試し、失敗からも成功からも学び、一つ一つ成果を積み重ねていく。

There are mistakes and false starts. They are part of the process of innovation. What's critical, therefore, is that leaders promote learning from these experiences.

4 Enable Others to Act

まずは、仲間と強固な信頼関係を築き、協同できる体制を整える。 

Without trust you cannot lead.

Building trust is a process that begins when someone is willing to risk being the first to open up, to show vulnerability, and to let go of control. Leaders go first.

Getting to know others firsthand is vital to cultivating trust and collaboration.

そして、仲間の自主性を尊重すると共に、仲間の能力を高める。

Promote an ownership perspective by making sure that people understand the big pictures of how the enterprise operates.

Ask questions; stop giving answers.

5 Encourage the Heart

まずは、仲間一人一人の貢献、成果を認め、一人一人に感謝の気持ちを伝える。

With a thank-you note, a smile, and public praise, the leader lets others know how much they mean to the organization.

They really do prefer to know how they are doing, and no news generally has the same negative impact as bad news.

Don't take anyone for granted.

そして、少しでもチームが成果を出したときには盛大に祝う。チームを誇りに思っていることを仲間に伝える。

Plan a festive celebration for even the smaller milestones that your team reaches. Don't wait until the whole project is completed before you celebrate.

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上記のうち、個人的には、4項目の"Without trust you cannot lead."というシンプルな言葉に強く同感しました。仲間同士の信頼関係がなければ、当然ながら、成果の出せるチームにはなれないでしょう。

また、5項目の"the leader lets others know how much they mean to the organization."というリーダーの役割は、本当に大切だと思 いました。そのことによって、仲間のやる気もまた出てくるのだと思います。

この本には、今まで自分が読んできたリーダーシップに関する本すべてに通じるような、リーダシップ論の基本的な(大切な)事項が、丁寧に書かれていると思いました。内容も実践的だったので、ページ数はありましたが、最後まで非常に興味深く読むことができました 。さすが、長く読み継がれている本だと思いました。お勧めの本です!

また、読んでいて、欧米と日本とでは多少文化の違いはあるかなぁ…とも思いましたが、基本的には、この本に書かれている事項は日本の組織にも充分当てはまると感じました。

私も、部門をまとめるような仕事をする時はもちろん、そうでない仕事をする時にも、またプライベートの場面でも、少しでもこの本に書かれていることを実践していきたいと思いました。

Leadership is everyone's business!

<日本語版>

2014年6月28日 (土)

読みました(洋書/ビジネス) ~ Onward

以前、梅田の紀伊國屋の「洋書バーゲン」で見つけた本です。3年前の本ですが、前から気になっていたので読んでみました。

スターバックスの創業者であるHoward氏が、2008年1月にCEOに復帰してからの約2年間を回想したものです。

Howard氏がCEOに復帰した時は、スターバックスは急激な店舗拡大等で、競争力を失いつつありました。また、アメリカの経済状況も最悪の状況でした。それでも、Howard氏は粘り強く、スターバックスの復活を信じて、新たな戦略を矢継ぎ早に実行していきます。

そしてそれらの戦略は、スターバックスの理念、具体的にはHoward氏らが2008年に定めた"Transformation Agenda"の"Seven Big Moves"に基づいています。

1. Be the undisputed coffee authority.

2. Engage and inspire our partners.

3. Ignite the emotional attachment wtih our customers.

4. Expand our global presence - while making each store the heart of the local neighborhood.

5. Be a leader in ethical sourcing and environmental impact.

6. Create innovative growth platforms worthy of our coffee.

7. Deliver a sustainable economic model.

Howard氏は、社内の他のリーダー達を信頼しながらも、ここぞという時には、反対の声があっても熱意をもって戦略を推し進めていきます。他人の声に惑わされず、かといって独りよがりにはならない(外部の客観的な視点は持ち続ける)、という微妙なバランスを、Howard氏はうまく保っているのだと思うのですが、現実問題として、この微妙なバランスを保つことのできるリーダーはそうそういないのだろうなぁ…と感じました。

内容としては、少し冗長なところもあり、もう少し短くしても良かったかなぁ…と思いつつ、一方で、多少冗長であるからこそ、Howard氏の苦闘、熱意、スターバックスに対する愛情がよく伝わってくるような気もしました。

ページ数があるので、読むのに少々時間がかかりましたが、身近なスターバックスの復活に関する話であり、日本の話も出てくるので、非常に興味深く読むことができました。また、理念・自信を持って経営に当たることの大切さ、その理念をすべてのメンバーに対して「明確に」「繰り返し繰り返し繰り返し」伝えることの大切さについても、再認識することができました。

Ensuring that communication is narrow, clear, and repetitive to set expectations wins people's trusut.

Listen with empathy and overcommunicate with transparency.

また、この本を読んで、普段何気なく飲んでいるコーヒーについても、もう少し詳しく知りたくなりました。今度、(いつものドトールではなく、)スターバックスにも行ってみようかなぁ…

2014年5月16日 (金)

読みました(洋書/ビジネス) ~ Flash Boys

渡辺由佳里さんの「洋書ファンクラブ」で紹介されていて面白そうだったので、読んでみました。

2007年、Royal Bank of CanadaのBrad Katsuyama氏は、株式市場での取引が思ったように出来なくなります。市場で売りに出ている株式に対して買い注文を出した途端(コンピューターのボタンを押した途端)、その売りに出ていた株式が「瞬時に」「全て」市場から消えてしまい、買えなくなってしまうのです。

Katsuyama氏は、いろいろ調べているうちに、株式市場が不正に操られているのではとの疑いを持つようになり、その疑いが確信に変わります。そして、ついには、Royal Bank of Canadaを辞めて、より公正な新しい株式市場(IEX)を立ち上げます。

Katsuyama氏が、試行錯誤しながら株式市場の闇を明らかにし、その闇に挑んでいく過程がとっても面白いのですが、それに加えて、Katsuyama氏と関わる人々が、本当にノンフィクションなのかと思うくらい個性が強く、それがまたこの本を面白くしていると思いました。

Katsuyama氏と関わる人々の過去や背景が、一人一人ページ数を割いて丁寧に描かれており、それがまた非常に興味深かったです。それぞれ出身国も違うし、得意分野も違うし、性格も違うのですが、いろいろな偶然・必然が重なって一緒に仕事をするようになり、同じ目的に向かって進んでいく姿は、「アメリカらしいなぁ…」と本当に羨ましく思いました。また、(優れた能力を持つ)個性の強い人々をまとめて大きな力に変えることのできるKatsuyama氏は、本当にすごいなぁ…と思いました。

また、ちょっと本筋から外れるかもしれませんが、アメリカの株式市場として「13のPublic Exchange」と「44のPrivate Exchange(Dark Pool)」があることや、HFT (High-Frequency Trading) firmが、注文指示が各市場に到達する時間の差異(millisecondレベルの差異)を利用して多大な利益を上げていることや、大手銀行・証券会社等の運営するDark PoolがHFT firmを(結果として)手助けしていること等、今まで知らなかった世界を覗くことができて、とても興味深かったです。

あまり馴染みのないアメリカの株式市場の話だったので、理解するのに少々時間がかかった箇所がいくつかありましたが、思ったよりもずっと面白く、興味深く読めました。また、「働くこととはなんぞや…」「一度しかない人生で何をするのか…」などなど、いろいろ考えさせられました。お勧めできる本です。

やはり、ノンフィクションは面白いなぁ~

2014年5月 5日 (月)

読みました(洋書/ビジネス、心理) ~ The Power of Habit

今年3月の紀伊國屋書店(梅田本店)の「洋書大バーゲン」で見つけて購入しました。渡辺由佳里さんの洋書ガイド「洋書ベスト500」にも載っております。翻訳もされているようですね。

我々の毎日の生活は、数多くの無意識に行われる行動(habit:日本語の「習慣」より広い意味を持っているように思います)から成り立っています。本書では、このhabitの力について様々な側面から書かれています。(私にとっての)本書の主要なポイントは次のとおりでした。

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Habitには、良いhabitもあれば、悪いhabitもあり、我々の生活に多大な影響を与えている。

良いhabitを身につければ、意識しなくても健康的な生活が送れるようになったり、効果的な学習ができるようになったり、競技会で最高のパフォーマンスを発揮できるようになったりする。

一方、悪いhabitを身につけてしまうと、知らず知らずのうちに健康が害されてしまったり、良好な人間関係や社会との関係が害されてしまったりする。やめようと思っても、自分の意思に拘らず無意識に行われてしまうので、そう簡単にはやめることができない。

その悪いhabitをやめる為にはどうしたらよいか。まず、そのhabit

1 cuehabitが起きるきっかけ

2 routinehabitの内容

3 reward habitを実行することで得られるもの(habitを実行する人が欲しているもの)

を分析し、認識することが必要である(特にcuerewardを的確に認識することが大事)。そして、cuerewardはそのままにして、routineだけを別の害のないroutine(同じようなrewardが得られるもの)に置き換えることができると、上手くいくことが多い。

そして、その置き換えた良いroutineが長続きするためには、belief(変わることが出来ると信じること)が必要である。その為には、お互いに支えあう仲間、グループを持つことが非常に有効である。

組織(会社など)にもhabit(組織体質、企業文化など)がある。その組織に悪影響を与えているkeystone habit(他のhabitにも影響する重要なhabit)を見つけ、それを変えることにより、より良い(より社会から信頼される、より影響力を持つ、より利益の出る)組織へと変えていくことが出来る。

具体的には、cue(お客様からのクレーム、製造機械の故障、事故の発生…)への好ましいroutine(対応方法)を予め定めておき、社員に何度も繰り返し練習・実践させて、cueに応じて無意識にそのようなroutineが出来るまでにしておく。好ましいroutineを行うことで得られるrewardについても、社員にしっかり認識させておく必要がある。

その結果として、一つのkeystone habitだけでも良い方向へと変わると、その他の組織のhabitにも好影響を与えることになる。

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その他、本書では、self-discipline (willpower)を身につける上でのhabitの役割、マーケティングと消費者のhabitとの関係、社会運動におけるhabitの役割、等々にも触れています。

本書は、我々の生活に多大な影響を与えているが、日頃ほとんど意識することのないhabitに目を向けさせてくれる、良書だと思います。少しまとまりが無いようにも感じましたが、具体例(Alcoa、Starbucks、Rhode Island Hospital、London Underground、NFL、Alcoholics Anonymous…)も多くて、理解しやすく読み易かったです。

私も、時々は自分(家族、会社…)のhabitに目を向け、分析することにより、自分(家族、会社…)にとってより良いhabitを身につけるようにしたいなぁ…と思いました。

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