Regretting Motherhood / A Study
日本語訳の「母親になって後悔してる」の紹介記事を何かで読んで興味深かったので、せっかくなので洋書で読んでみました。
著者のOrna Donathはイスラエルの社会学者で、「母親になったことを後悔している」イスラエルの女性にインタビューをし、後悔の念の背景を考察していきます。
後悔の念の理由は人それぞれで、
・自分のための時間が持てない。
・パートナーが非協力的で育児が大変。
・絶えず子供のことが頭から離れなくてしんどい。
・自分が主役の人生がなくなってしまった。
等々、いろいろあるようです。パートナーが育児に協力的だったり、社会制度(国・地方自治体の支援等)が充実していれば後悔の念をいだかなかったであろうケースもあれば、そのような協力・支援があったとしてもやはり後悔の念をいだいたであろうケースもあるようです。
「母親になったことを後悔している ≠ 子供を愛していない」ということ、むしろ「母親になったことは後悔しているが、子供は愛している」ケースが多いこともよく理解できました。
また、著者は、今日の社会の問題点についても指摘しています。例えば、
・今日の社会は、女性に対して母親になる以外の選択肢をきちんと示していない、当然に母親になるものだと思わせている。
・今日の社会は、母親の役割を神聖化し過ぎており、母親を一人の主体性を持った人間(様々な希望、考え、感情等を持つ人間)として扱っていない。
等々の問題点を指摘し、女性の主体性を尊重していない、女性に特定の生き方を押し付けている現状を批判しているように思いました。
本書は、タブー視され、抑えられてきた「母親になったことを後悔している」という声が確かに存在することを、明らかにした(書籍という形で公にした)点で評価されるべきだと思いますし、本書を読んで救われた女性も少なからずいると思います。タブー視されてきた内容を、冷静に分析・考察する著者の姿勢にも好感が持てました。
洋書の読み易さとしては、文章が少し読みにくく感じました。また、「考察→インタビュー→考察→インタビュー…」といった感じで淡々と進んでいくので、人によっては読んでいて少し飽きてくるかもしれません。
真面目な内容の本なので、軽い気持ちで読めるような本ではないと思いますが、家族というものを新たな視点から見ることができる良書だと思いますので、できるだけ多くの方に、女性だけでなく男性にも、読んで欲しいなぁ…と思いました。ご興味がありましたら、日本語訳でも洋書でも結構ですので、ぜひ手に取ってみて下さいませ。
今年3月に発売された日本語訳はこちら。
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