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2020年2月23日 (日)

Why We Sleep / The New Science of Sleep and Dreams

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少し前(2017年)に出版された本で、前から読もうかなぁ…と思っていたのですが、昨年、紀伊國屋の洋書バーゲンで見つけたので、読んでみました。

著者は米国の神経科学者Matthew Walker氏。本書は、睡眠の役割、大切さについて科学的に説明し、睡眠を軽視しがちな現代社会に警鐘を鳴らしている本です。いかに睡眠が人の心身の健康に大きな影響を及ぼしているかを、様々な実験結果、観察結果、調査結果等に基づいて丁寧に説明しており、説得力があります。

個人的に興味を持った点、覚えておきたいと思った点は、次のとおりです。

 

・睡眠のリズムは、そう簡単に変えられるものではない。

 →時差ボケ(jet lag)は、1日に1時間程度しか調整できない。

・朝型、夜型は遺伝で決まるのであり、個人の意志で変えられるものではない。

 →朝型の人は約40%、夜型の人は約30%、その中間の人は約30%。

 →朝一斉に働き始める現代社会では、夜型の人は十分な睡眠がとれず辛い。

 →夜型の人は、午前中は頭が働かず、能力が十分に発揮できず効率も落ちる。

・思春期は夜型になる。こちらも、個人の意志で変えられるものではない。

 →思春期は睡眠のリズムが大人よりも数時間後ろにずれる。

 →夜10~11時に眠くならない、朝6~7時にすっきり起きれないのは当たり前。

 →朝は頭が働かないので、始業時間を遅らせた方が学力が上がる。

・学んだ知識を定着させる為には、十分な「深い NREM Sleep」が必要である。

 →学んですぐに忘れてしまったことですら、思い出して定着させることができる。

 →学んだ日の夜に十分睡眠をとることが大事。

・運動能力を向上させる為には、十分な「浅い NREM Sleep」が必要である。

 →筋肉の動きは脳で制御しており、その日練習した筋肉の動きは、その後の睡眠により脳に定着する。

 →その日の練習でどうしても上手くできなかったことが、一晩寝て翌日にはスムーズにできるようになっていることがある。ピアノを習っている上の子も、そういう経験があると言っていた…)

 →Practice does not make perfect. It is practice, followed by a night of sleep, that leads to perfection.

・創造力や問題解決能力を高める為には、十分なREM Sleepが必要である。

 →REM Sleepの時に、ある知識と別の知識を結びつける脳の活動が行われている。

 →その活動により、世の中をよりよく理解できるようになる(knowledge → wisdom)。

・感情を適切にコントロールする為には、十分なREM Sleepが必要である。

・睡眠不足の時の判断能力は、飲酒している時の判断能力と同等。

 →睡眠不足で運転するのは、飲酒運転と同様に危険。

 →睡眠不足の時は数秒間睡眠状態に陥ることがあり、その間は危険回避動作が全く行われず、更に危険。

・睡眠不足だと食べ過ぎになるだけでなく、甘いもの、塩分の多いものを欲するようになる。

 →睡眠不足により、衝動をコントロールする脳の機能が弱るため。

・睡眠不足だと、免疫力が弱まる。

 →予防接種の効果もかなり低くなる。

・睡眠は8時間程度とる必要がある。

 →1~2時間程度の睡眠不足でも、判断能力等に大きな影響が出るが、本人はそれに気づかない。

・朝、アラームがないと起きられないのであれば、それは睡眠不足の状況である。

・現在処方されている睡眠薬は効果が少なく、副作用もある。

 →また、睡眠薬で誘発された睡眠は質が良くない。

 →安易に睡眠薬を使うべきでない。それよりも認知行動療法を受けた方が効果がある。(私の治療を受けた経験からすると、医師の指導の下、期間を限って使うのはいいと思う…)

 

本書では、以上のように、いかに睡眠が心身の健康に不可欠か丁寧に説明した後、睡眠の量や質を改善する為に、個人として、また社会として、どうしていくべきかについても提案しております。

年をとるにつれて、次第に睡眠の量や質が落ちてくるとのことなので、私個人としては、心身の健康を維持できるよう、また仕事やプライベートで的確な判断ができるよう、以下の点を心がけたいと思いました。

 

・週末も含め、起きる時間、寝る時間を一定にする。

 →習慣づけることが大事。

・良い睡眠をとる為には体温を下げる必要がある。

 →運動は寝る2~3時間前に終わらせる。

 →寝室の温度を上げ過ぎない。標準的な寝具では、理想的な寝室温度は18.3℃。

 →寝る時は厚着をしない。

・睡眠を妨げるカフェインは長く体内に残る(年をとるほど長く残る)。

 →コーヒーや紅茶は夕方からは取らないようにする。

・光(特にLED)は入眠を妨げる。

 →寝る前にはスマホやパソコンを見ないようにする。

 →寝室にはなるべく光を入れない。

・消化不良は睡眠を妨げる。

 →夜遅くにしっかりとした食事をとらない。

・寝る前は、悩み事を忘れ、リラックスするよう心掛ける。

 →寝る前までスケジュールを詰めない。

 →寝る前は、ゆったり読書をしたり、音楽を聴いたりするのも良い。

 

また、社会としても、各人の睡眠のリズムに合わせて会社の就業時間より柔軟にしたり、思春期特有の睡眠リズムに合わせて学校の始業時間を遅らせたりする等、様々な場面で対策が進んでいくといいなぁ…と思いました。そのことにより、社会としても睡眠という万能薬を十分活かせるようになり、例えば、会社では従業員の生産性や幸福度が、学校では生徒の学習効果が高まっていくのではないでしょうか。

普段軽視しがちな「睡眠」の大切さがよく理解できる、良い本だと思います。私自身、昨年体調を崩した時に、医師の指導の下、睡眠を改善することで体調を戻すことができたので、本書の内容にとても共感できました。お勧めです!

邦訳はこちら

(2020.10追記)

Matthew Walker氏がプレゼンしているTEDの映像がありましたので、貼っておきます。本書のポイントをごく簡潔に述べたような内容になっていますので、こちらもお勧めです。

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