The BRAVE LEARNER
先日、新宿の紀伊國屋の「洋書セール」で見つけて、面白そうだったので読んでみました。
著者のJulie Bogartさんは、5人のお子さんをホーム・スクーリングで育てており、本書では、その経験に基づいて、ホーム・スクーリングをする際の気持ちの持ち様、気に留めるべきポイント、具体的な実践方法・実践事例等々について、幅広くアドバイスしております。
基本的には、ホーム・スクーリングをしている親向けに書かれた本だと思いますが、ホーム・スクーリングをしていない親にも参考になりそうな箇所が結構ありました。
本書の内容で、個人的に参考にできそう、覚えておきたいと思った点は、
・学んだことが日々の生活でどのように使われているか分かると、学んだことがより記憶に残る。
・子供や自分ののひらめきに従って、スケジュールから脱線してみるのもまた良い。そんな時にこそ、楽しい学びが生まれる。
・ボーっとしている時にこそ、新しいアイデアは生まれる。
・子供が自ら学べるようになるには、一緒に協力してくれる仲間が不可欠である。子供が一人だけでやることが難しいことがあれば、進んで協力してあげよう。
・どんなことをしていても、学びは生まれる。ゲームをしていても、漫画を読んでいても、何かを学んでいることが多い。
・子供に興味が芽生えたら、たとえ長続きしなくても、それをとことん、目に見える形でサポートしてあげよう。
・一日を、子供が興味のあることから始めて、子供に一日を乗り切るエネルギーを与えよう。
・子供ができていないことに目が行きがちなので、もっと、子供のできていることに目を向けよう。
・体を動かしていた方が、じっとしているよりも集中力が高まる。
・子供の集中力は、長続きするものではない。平均すると、(年齢+1)分程度しかつづかない。「集中→リフレッシュ→集中…」のサイクルを上手くまわしていくのが大切。
・一つのこと(課題)ができるようになったら、すぐに次のこと(課題)に移るのは良くない。その前に、できるようになったことを存分にやらせてあげよう。
・子供に他人の気持ちを尊重するようになって欲しかったら、まずは親が子供の気持ちを尊重しよう。そして、他人を批判したり、他人の陰口をたたかないように務めよう。
・算数の課題を理解するのに時間のかかる子もいるが、問題はない。むしろ、ゆっくり学ぶことが、より深く理解することにつながる。
・子供が取り組む教材は、親自身が興味が持てるもの、魅かれるものを選ぼう。
・子供が学ぶことを嫌がっている時は、怒ったり、説教したり、脅したりしてやらせても、楽しく学ぶようにならない。そんな時は、どのようにしたら子供を学びに引き込むことができるかを考えよう。
・学び(learning)が遊び(play)のようになればなるほど、子供はより多くのことを学ぶ。
・微笑むこと(smiling)は、周りの人たちによい影響を与えるだけでなく、自分自身にも良い影響を与える。
・高度で複雑な思考を身につける為には、「成長→停滞→成長…」のサイクルが必要がある。停滞の時期は、学びが止まっているのではなく、これまで学んだことを統合している大切な時期なのである。
・子供が(課題ができなくて)泣いたら、学習は終了して、暖かく接してあげよう。
・子供に、親自身が大人になっても楽しく学び続けている姿を見せるのが大切。まずは親が自分の興味を探求しよう。
・家は、皆がありのままの自分でいられる場所であるべき。
・一つの教育方針・方法にこだわる必要はないし、それでは上手くいかない。子供によって個性、得手不得手、年齢、学習ペースが様々だし、親によって求めること、目指すこと、能力も様々なので、その時々で適した方針・方法は変わってくる。選択肢を広く持ち、いろいろ試しながら柔軟に変えて行くのが良い。
・学びは一生続くものなので、あせらず子供のペースに合わせてゆったりと取り組むことが大切である。
また、具体的な実践方法で面白そうだと思ったのは、
・テーブルの上に、いろいろな種類の画材、筆記用具、紙類、布類、テープ、接着剤、スタンプ、雑誌等々、様々な物を置いておき、子供に自由に使わせる。飽きないように、定期的にアイテムを入れ替える。
・子供の好きな飲み物・お菓子を食べながら、一緒に算数の問題を解く。
・時には、カフェや図書館や公園へ行って、一緒に勉強するのも良い。
・筆記用具は、鉛筆だけでなく、色鉛筆、クレヨン、蛍光ペン等、子供の好きなものを自由に使わせると良い。
・子供と一緒に、疑問に思ったことを付箋に書いて、どんどん壁に貼っていく。一週間ぐらい溜めたら、夕食の時にでも、その付箋を読み上げたり、それについて話し合ったりする。
・ベッドで読書をしている時には、夜更かしを認める。クッションを置いたり、バスケットの中に本を入れたりして、くつろげる読書専用の場所(コーナー)を作る。
・子供と一緒に、思いついたこと、心に浮かんだことをそのまま書く時間を設ける(freewriting)。例えば、書くことが思いつかないようだったら、「書くことが思いつかない」とそのまま書く。子供が戸惑うようだったら、テーマを決めてもいい。
・ボードゲームを一緒にやる。数える、お金を配る、読む、順番を待つ、戦略を考える、集中する等々、沢山のことが学べる。最近は協力型のゲームもある。
・月(週)に一度、子供の丸一日の出来事をノートに書き記す。学習している時以外の、何気ない会話、お風呂での鼻歌、レゴやテレビゲームの遊び等も書き記す(narrative sketch)。そのことにより、子供が一日を通して、様々なことから様々な学びをしていることに気づくことができるし、子供がどのような点で苦労しているか、最近やっていないこと(課題)は何かについても、冷静に把握することができる。また、過去の記録と比べると、どのように成長しているかも把握することができる。
・自分用のノートを作って、いつも手元に置いておく。子供の教育について思ったことや気になったこと、自分の為にやってみたいこと、心に残ったフレーズ、気になる本、映画、ミュージシャン、イベント、場所等々、自由に書き記す(Scatterbook)。それを定期的に見返すことにより、今後やるべきこと、やりたいことのヒントになる。
・片付け等は、家族全員でやって、やり終えたら皆でお茶をするといい。
・手伝いは、指示するのではなく、助けが必要な旨を伝えてお願いをする。無理強いはしない。子供が手伝ってくれる時は、やり方や、やるタイミングは子供に任せる(基準は下げる)。一緒にやる。ありがとうと言う。
使えそうなアイデアが一杯ありましたので、これから少しずつ実践していきたいと思います。
5人のお子さんをホーム・スクーリングで育てただけあって、本書には著者のアイデアが一杯一杯詰まっていました。また、本書を読み終えて、やはり「Playing = Learning」なんだなぁ…と改めて思いました。
本書は、文章自体は少しくだけていて、知らない単語も多く、私にはちょっと読みにくく感じました。私にもう少し英語力があれば、著者のユーモアもより理解できて、もっと面白く読めたのかなぁ…と思いました。
とは言え、ホーム・スクーリングをしていない親にとっても、子育てにおいて参考になりそうな箇所が沢山ありましたので、子供の教育に関心のある方にはお勧めできる本だと思います。
なかなか面白い本なのですが、日本ではそれほどホーム・スクーリングが盛んでないと思うので、日本語訳は出ないかなぁ…
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