ブログの紹介

ご訪問、ありがとうございます! このブログでは、これまでに読んだ洋書の感想を、気ままに書いております。

2008年の終わり頃に、「日本人は英語のインプット量が足りない」というような記事を読んだのを切っ掛けに、趣味で洋書を読むようになりました。それが、細々とですが、現在まで続いております。

私が会社勤めということもあって、ビジネス書の洋書をよく読みます。ノンフィクションも好きでよく読みます。

また、語彙力が弱いからでしょうか、英米の文化・習慣に疎いからでしょうか、フィクションを読むのが苦手です。そのため、フィクションであれば児童書を手に取ることが多いですね。

洋書選びの参考にしているのは、渡辺由佳里さんのブログ「洋書ファンクラブ」と本「洋書ベスト500」です。また、Amazon(アメリカのサイト)での評判も併せて参考にしております。

1ヶ月に1冊分ぐらいしか感想を書いていないので、時々覗きにきていただければ幸いです!

2022年4月23日 (土)

NO RULES RULES / NETFLIX and the Culture of Reinvention

NETFLIXの創業者の一人で現CEOのReed Hastings氏と、ビジネススクールの教授であるErin Meyer氏の共著です。NETFLIXが、イノベーションを起こし続ける為に、どのような企業文化を大切し、その企業文化を維持・強化する為にどのような方策をとっているのか、従業員に対するインタビューを交えながら具体的に分かりやすく説明しています。

2年くらい前に、NETFLIXのもう一人の創業者であるMarc Randolph氏の著書"That Will NEVER Work"を読み終わった後に、Reed Hastings氏の本(本書)が出版されているのを知って、いつか読みたいと思っていたのですが 、やっと読むことができました。

NETFLIXの企業文化は、ざっくりと言うと…

1 優秀な人材しかいないチームを作る。

2 常日頃から、お互いに率直に意見を言い合う。

3 現場の判断に任せる。

の3つに集約されるようです。そして、どれか一つでも欠けると機能しないとのこと。

上記1の文化を実現するためには、報酬は業績連動型にしない、優秀な人材に対してはマーケット以上(他社以上)の報酬を支払う、社内で成績の順位付けをしない、優秀とまでは言えない人材に対しては十分な退職手当を支払って去ってもらう、等の方策をとっています。

上記2の文化を実現するためには、定例会議でフィードバックの機会を設ける、有用な意見交換になるようフィードバックの仕方についてガイドラインを定める(4A : Aim to Assist, Actionable, Appreciate, Accept or Discard)、リーダが率先してフィードバックを求める、できるだけ多くの情報を従業員に開示する、年に1、2回は時間をかけてお互いにフィードバックし合う機会を設ける、等の方策をとっています。

上記3の文化を実現するためには、休暇の取得、経費の支出等について承認不要とする(忙しい期末は避ける、費用対効果を考慮する等、最低限の方針はチーム毎に話し合って決めておく)、自ら決断する前に他のメンバーと意見交換することを求める(但し、上司の顔色を伺うようなことはしない)、会社・部門の目標・戦略をメンバーに明確に伝える、等の方策をとっています。

正直な感想として、普通の会社で上記のような文化・方策を採用するのはちょっと難しいだろう、やり過ぎになってしまうだろう、と思いました(特に上記1)。また、上記のような文化・方策を日本で実践するのは、労働法制、文化等の違いがあるのでなかなか大変だろうと思いました。日本では、既存の会社というよりはスタートアップ等で採用・実践すると良さそうですね。

最後の10章(Bring It All to the World!)では、上記の企業文化を各国の従業員に共有してもらう為にどのような工夫をしているか記載されているのですが、その前提として「NETFLIX(アメリカ寄り)の文化・傾向」と「各国(日本含む)の文化・傾向」との違いがグラフ等で分析されていて、なかなか興味深かったです。1章から9章までは、読んでいて「とても良さそうな企業文化だけど、NETFLIXだからこそ実現できるんだろうなぁ…」という気持ちになりがちだったのですが、この10章は「なるほど、異なった背景を持つ人とコミュニケーションする時に役立ちそう」と思えて、とても参考になりました。

洋書としては、それほど難しい単語がなく、比較的易しい文章で書かれているので、とても読み易かったです。従業員のエピソードも沢山ちりばめられていて、読んでいて面白かったです。NETFLIXに少しでも興味のある方であれば、楽しく読めると思います。

ちなみに、邦訳も出ております。

 

2022年2月10日 (木)

BORN A CRIME - Stories from a South African Childhood

 

この本も、出版された頃(2016年)から読みたいと思っていたのですが、やっと読むことができました。

著者(Trevor Noah)はコメディアンで、1984年、まだアパルトヘイト(人種隔離政策、1994年廃止)が廃止される前の南アフリカで、黒人の母親と白人の父親の間に生まれます。本書では、著者の子供時代から青年時代にかけての出来事を、母親(Patricia Nombuyiselo Noah)との関りを軸に描いていきます。

著者の母親は、アパルトヘイト廃止前後の混沌とした社会にあっても自ら人生を切り開いていこうとする、芯の通った強い方だったようで、その母親の愛情を受けて著者が逞しく成長していく過程が、ユーモアを交えながら描かれており、読んでいて楽しかったです。特に、黒人でも白人でもない微妙な立場を、自らの知恵・知識をフル活用して乗り切っていく著者の姿には、思わず拍手を送りたくなりました。ただ、著者は、走行中のバスから母親と一緒に飛び降りたり、万引きが見つかって警察に捕まりそうになったり、CDを違法コピーして稼いだり、他人の車に無断で乗って刑務所に入れられそうになったり…ちょっと冷静に考えると、なかなか恐ろしい出来事が多いです。

本書では、どんな辛い出来事も、コメディアンらしく笑い飛ばしている感じがするのですが、最終章「18 MY MOTHER'S LIFE」だけは少し調子が違いました。母親の再婚相手(Abel)は、普段はまあ良いのですが、お酒を飲んだ時には抑制が効かなくなって家庭内暴力を行い、それが次第に悪化していきます。警察を呼んでも、家庭内の出来事には介入してくれず、状況はひどくなるばかり。母親の後押しもあって、著者は家を出て、なかなか逃げられなかった母親もついに家を出て再婚するのですが、Abelは著者の母親を殺そうと銃口を向け…

アパルトヘイト廃止前後の南アフリカの状況が、著者の目を通して生き生きと描かれていて、興味深く、楽しく読んでいたのですが、最終章だけは読んでいて辛かったです。その最終章で描かれている、家庭内暴力(DV)のもたらす事態の深刻さ、悲惨さが、とても印象に残りました。描かれているの南アフリカでの出来事ですが、テレビ、新聞等でしばしば報じられているとおり、アメリカでも日本でも同様な出来事は続いているので、早くこのような悲劇が無くなる、防げる世の中になって欲しいと改めて思いました。

洋書としては、思っていたよりも単語が難しくて少し手こずりましたが、話が面白いので、読み進めていくのが楽しみでした。広くお勧めできる本だと思います。

邦訳はこちら…

 

2021年12月 7日 (火)

THE INEQUALITY MACHINE - How education divides us

 

Paul Tough氏の本は、これまで"How Children Succeed(2012年)"と"Helping Children Succeed(2016年)"を読んだのですが、どちらも興味深かったので、本作(2019年)も手に取ってみました。私が入手した本では副題が"How education divides us"となっていたのですが、現在は"How college divides us"と、より直接的な表現になっていますね。

今回は、アメリカの大学についての話です。本書の要旨は、概ね次のとおりかと思います。

「貧しい家庭に育った子供たち(特にBlack studentsやLatino students)でも、頑張って勉強して良い大学に進めれば、より豊かな人生を送れるチャンスが広がると考えられてきたが、どうもそう簡単ではないらしい。現実には、貧しい家庭で育った子供が良い大学に入るのは様々な要因で難しくなっているし、頑張って良い大学に入れたとしても、そこで退学せずに卒業までやり抜くのは、こちらも様々な要因で大変である。残念ながら、現状、大学の仕組みが貧しい家庭の子供たちにとってかなり不利になっている、と言わざるを得ない。現状を克服しようと大学による取り組みが行われているが、まだまだ不十分である。」

上記のような内容を、様々なデータや教育研究者、教授、学校職員、家庭教師、学生等に対する取材に基づき、具体的事例を交えながら丁寧に説明していきます。

貧しい家庭の子供が良い大学に入るのが難しくなっている要因としては、

・大学受験の選考に用いられるテスト(SATやACT)のスコアは、家庭教師等でテスト対策をしっかり行える裕福な家庭の子供たちの方が、貧しい家庭の子供たちよりも高い傾向があり、結果として、選考の仕組みが貧しい家庭の子供に不利になっている。

・財政的に厳しい大学が多いが、それらの大学は、学費を免除することになる貧しい家庭の優秀な子供よりも、学費を満額払ってくれる裕福な家庭のそれほど優秀でない子供の方を優先せざるを得ない。

・多額の寄付金で潤っているトップクラスの大学は、貧しい家庭の子供を受け入れる財政的余裕が十分あるにも拘らず、選考でSATのスコアを重視すること等により、他の大学よりも貧しい家庭の子供たちを受け入れていない。

・貧しい家庭の子供にチャンスを与える使命を負っているはずの州立大学でも、1980年頃から州からの補助金が大幅に減った為、授業料が高騰し、授業の質が低下してきている。つまり、貧しい家庭の子供にとって不利な状況になってきている。

・貧しい家庭の子供は、家庭や地元の高校から勉強面、精神面、財政面等で支援を殆ど受けられない。大学進学についてのアドバイスも十分に受けられない。

などが挙げられていたと思います。また、貧しい家庭の子供が、トップクラスの大学を退学せずに卒業するのが大変な理由としては、

・同じような家庭環境で育った学生がキャンパスに少なく、疎外感を感じ、居場所がなくなる。特に、私立の名門(エリート)大学では、裕福な家庭の学生(特にWhite students)が大多数で、話がかみ合わず、彼らの文化、振る舞いにも馴染むことができない。

・地元の高校ではトップクラスだった子供が、地元の高校ではしっかりしたAP(Advanced Placement)の授業を受けられなかった(又はAPの授業を全く受けられなかった)為、大学1年目の微分積分学等の授業についていけなくなり、自信を喪失し、理系の進路を諦めてしまったり、退学してしまったりすることになる。

・大学で疎外感を感じ、勉強面でも苦労している上に、家庭でも財政面を中心に様々な問題が発生しており、家庭から全くサポートを受けられない。

などが挙げられていたと思います。その上で、このような現状を克服しようとする試みについては、

・大学の選考の際に、SATやACTのスコアの提出を任意(提出しなくても良い)とし、高校での成績(GPA)や取り組み等で評価、選考する。

・大学のキャンパス内に貧しい家庭の学生達、マイノリティの学生達が集まれるような場を設け、安心できる居場所を作り、必要に応じて適切にサポートできる体制を整える。

・勉強面で苦労しそうな子供たちを集めて、TA(Teaching Aide)の支援を受けながら、仲間で協力し合って勉強できるような場をつくる。

などが挙げられていたと思います。個人的には、テキサス大学の微分積分学の授業を教授やTAの支援を受けながら乗り越えた、メキシコ出身のIvonneの話に希望を感じました。

そして最後に、次のとおり問題提起をして本書を終えています。

「これまでアメリカは、貧しい家庭の子供たちも含めた、全ての子供たち若者たちが、家族を養っていくのに十分な教育を受けられるような政策を実施してきた。例えば、1910年から1940年頃にかけて行われた高校無償化(high school movement)や第二次世界大戦後に実施された退役軍人が大学教育を無償で受けられる制度(GI Bill)が挙げられる。しかしながら今日のアメリカでは、国や州などによる十分な支援が行われていない。すべての子供たち若者たちに、家族を養っていくのに十分な教育(技術が進展した今日においては「大学教育」)の機会を与えることは、国の経済的繁栄につながることを今一度認識して、政策を考えていくべきであるし、我々も、親、教育者、市民として働きかけていくべきである。」

私がこれまで読んできた教育関連の本では、教育格差を縮める取り組みとして、幼児期から高校までの取り組みに焦点が当たっていることが多かったのですが、本書では大学での取り組みに焦点が当たっていて、非常に興味深かったです。個人的には、できるだけ早い時期(幼児期~小学校低学年)での取り組み(介入)が一番大事だと思っているのですが、大学での取り組みも大切であることを理解することができました。

本書はアメリカの大学についての話ですが、日本でも、アメリカほどではないにせよ、同様のことが起きていると思います。国立大学の授業料は1980年から2000年頃にかけて大分上がりましたし、貧しい家庭の子供よりも裕福な家庭の子供の方が、一般的には良い大学に入りやすい環境が整っていると思います。本書で主張されているとおり、教育格差を無くすことが国の発展につながっていくと思うので、日本でも積極的に取り組んでいってもらいたいと思います。

洋書としては、様々な学生たちのストーリーが適度に織り交ぜられており、文章も分かりやすく、単語もそれほど難しくはなかったので、最後まで飽きずに興味深く読むことができました。教育に興味がある方にはお勧めできる本だと思います。

2021年9月18日 (土)

DEAR LIFE

2013年にノーベル文学賞を受賞したAlice Munro氏の短編集(2012年)です。

Alice Munro氏の作品を一冊くらいは読んでおきたいなぁ…と思って読み始めたのですが、「あれ、この話、知ってる」。いつ頃読んだのか、洋書で読んだのか邦訳を読んだのか、全く覚えがないのですが、「どの話も、断片的に、記憶がある」。ただ、どの話も結末を覚えていなかったので、初めから終わりまで堪能することができました。

まずは、短編が10話。

どの話も、登場人物は、素晴らしいことを成し遂げるのでもなく、立派な人生を送るのでもなく、それぞれの生活をその人なりの思いで過ごしています。その生活の中で、困った出来事や、いらいらする出来事や、楽しい出来事や、悲しい出来事や、気になる出来事が起き、登場人物の感情が揺れ動きます。それぞれの出来事や登場人物の心情が淡々と描かれているのですが、いつの間にか話に引き込まれていくのは、著者の描写が巧みだからでしょうか。また、いらいらする出来事も悲しい出来事も、ちょっとしたユーモアを交えながら語られるので、それほど辛くならずに読むことができました。

個人的には、読んでいるこちらもだんだん不安になってくる、"IN SIGHT OF THE LAKE"が一番印象に残りました。自分にもこんな経験が、しばしばあるので…

最後に、自伝的な短編が4話。

著者自身の子供時代の経験を元にした短編。話の内容からすると、著者の子供時代はなかなかに大変だったように思うのですが、読んでいても悲壮感は感じませんでした。最後の話が特に印象的で、本書の題名"DEAR LIFE"の由来もここで分かります。

自伝的な短編も含めて、どの話も人間の不完全さ(滑稽さ、不合理さ、悲しさ、弱さ、はかなさ…)が、冷めているようで優しい目線で描かれていて、読み終わった後に温かい気持ちになれました。また、全体的に、Pathos(哀感)を感じる作品が多かったように思います。

おそらく読んだのは2回目なのですが、やはり、フィクションが苦手な私には英語表現が難しく、著者の意図をつかみ切れていないであろう箇所も沢山ありました。それでも1回目よりは深く味わえたと思うので、改めて読んでみて良かったです。

人を選ぶとは思いますが、ある程度洋書を読み慣れている方にはお勧めできると思います。一編一編、読後感を楽しみながら読むことのできる本だと思います。

邦訳はこちら…

2021年7月11日 (日)

Most Likely to Succeed / Preparing our Kids for the Innovation Era

 

同タイトルのドキュメンタリー映像の方で有名ですが、書籍もあるということなので読んでみました。

本書において著者は、現在の社会は「知識を重視する社会」から「イノベーションを重視する社会」に変わったにも拘わらず、子供たちへの教育は昔のままで知識を詰め込むことに重きを置いており、結果的に、子供たちから社会で成功するための能力(創造力、協同する力、批判的思考力などなど)を奪っていると、具体的なデータを挙げて警鐘を鳴らしています。その上で、どのように教育を変えていくべきか、先進的な取り組みを紹介しながら提案し、早期の変革を促しています。

ドキュメンタリー映像で中心的に取り上げている"High Tech High"の取り組みについては、本書では数ページ程度しか取り上げられていませんので、そこは期待しない方がよいと思います。本書では、ドキュメンタリー映像よりも、かなり包括的で詳細な分析がなされており、読みごたえがあります。

私自身、昨年頃から子供たちの進路について考える機会が多くなったので、本書を読みながらいろいろと考えさせられました。私自身が旧来型の知識重視の(テスト重視の)教育を受けてきたからだと思いますが、本書を読んで頭では理解したつもりでも、いざ自分の子供たちに新しい教育を受けさせる段になると、どうしても少し抵抗を感じてしまいます。おそらく、まずは親自身が学んで、考え方を修正していかなければならないのでしょうね。

本書ではアメリカの教育について取り上げていますが、日本でも同様に、まだまだ、大学受験に合格することが中学校・高校の教育の中心になっていると思います。本書で紹介されている先進的な取り組みや、日本における先進的な取り組み(数年前に研修を受けた「ラーンネット」もその一つでしょう)を頭に置きながら、子供たちの話に耳を傾けていきたいと思いました。

少々難しい英単語が出てきますが比較的読み易いと思いますので、子供の教育に関心のある方、特に子供の進路について考えている方にお勧めできる本だと思います。併せて、同タイトルのドキュメンタリー映像(Trailerへのリンクはこちら)も観ると、より理解が深まると思います。

 

2021年4月29日 (木)

Never Let Me Go

 

何年も前から、いつかは読みたいと思っていたのですが、なんとなく先送りにしていた本です。ここのところノンフィクションが続いていたので、良いタイミングに思えて手に取ってみました。2005年に出版された作品で、渡辺由佳里さんの「ジャンル別 洋書ベスト500」にも掲載されております。

寄宿舎(のような施設)で青年期まで過ごした主人公(Kathy H.)が、10年以上務めてきた"carer"という仕事を終えるにあたり、親友であるRuth、そしてTommyとの思い出を寄宿舎時代から振り返る形で話が進みます。「carer」「donation」「guardian」「madam」「gallery」といった言葉が、いったい何を意味するのかよく分からないまま話が進行していくのですが、次第にその意味が分かってきます。

2017年にノーベル文学賞を受賞したKazuo Ishiguro氏の代表作の一つであり、あらすじは様々なところで紹介されていると思いますので、ここでは触れないでおきます。フィクションなのですが、将来的には十分起こりそうな話であり、また、現実の搾取されている人たちの状況を仄めかしているようにも思えて、読んだ後はいろいろと考えてしまいました。

また、Kathyたちの寄宿舎時代の出来事を読んでいる時は、何故か、我が家の子供たちが読んでいる漫画(観ているアニメ)「約束のネバーランド」が頭に浮かんでおりました。約ネバのように、寄宿舎(のような施設)の子供たちが救われることはないんですけどね…

表現的に難しい箇所が所々ありましたが、思っていたよりも読み易かったです。早朝の通勤電車で少しずつ読み進めていったのですが、最後の数章だけは、これまでの話がつながってくるので一気に読んでしまいました。

改めて言うまでもないとは思いますが、お勧めの物語です。

邦訳はこちら…

 

2021年3月14日 (日)

Tiny Habits / The Small Changes That Change Everything

「良い習慣を始めたい」「悪い習慣を止めたい」と思って挑戦してみるけどなかなか上手くいかない…本書はそんな悩みにこたえてくれる本だと思います。

ある行動(Behavior)は、モチベーション(Motivation)やり易さ(Ability)誘発要因(Prompt/その行動を思い出させるもの)の3つが揃った時に初めて実行されるとした上で(B=MAP)、その3つのどれか、特にやり易さ(Ability)誘発要因(Prompt)を改善することでその(良い)行動を習慣化することができ、逆に悪化させることでその(悪い)行動を止めることができると説明しています。

やり易さ(Ability)を改善するとは、習慣にしたい行動の内容(量、回数、時間、負荷等)をとても小さいものにするということで、そのことにより習慣を続け易くします。例えば本書では、フロスの習慣について、まずは1本の歯だけフロスすることから初めるよう勧めています。その後、しっかりと習慣づけができてから、無理のない範囲で徐々に内容(量、回数、時間、負荷等)を大きくしていくのが良いそうです。

誘発要因(Prompt)を改善するとは、誘発要因を既に日常生活に組み込まれている「既存の習慣」にして、その「既存の習慣」の直後に「習慣にしたい行動」を行うようにする、ということです。ポイントとしては「既存の習慣」も「習慣にしたい行動」も、できるだけ具体的に定めると良いそうです。例えば、「トイレから出てきた」直後に「トイレ横の壁で壁腕立て伏せを2回を行う」といった感じです。

自分について振り返ってみても、続いている習慣は、確かに誘発要因(Prompt)が「具体的な」「既存の習慣」になっていると思います。例えば、「朝、通勤で山手線に乗った」直後に「鞄から洋書を取り出して読み始める」、「昼食後のごみ捨て」が終わった直後に「スマホで英語のTEDを聞く」といった感じです。逆に習慣が続かない場合は、誘発要因(Prompt)が「既存の習慣」になっていない、なんとなく気が向いた時にやろうとしているケースが殆どだと思います。例えば、定期的な運動、英語のスピーキングの練習、フルートの練習などなど…

また、"People change best by feeling good, not by feeling bad."との考えの下、良い習慣を身に付けるためには「どんな些細な習慣でも実行できたら毎回きちんと自分を褒める、称える」ことが大事であると述べています。この点は、一般的に日本人が苦手な点だと思いますので、特に意識する必要があると思いました。

本書では、良い習慣を身に付ける(悪い習慣を止める)ための方法が、実例も沢山交えながら、分かり易く説明されていると思います。各章の最後に、各章のまとめも兼ねて具体的な実践方法が簡潔に書かれており、著者の読者に対する「本書を読んで行動に移し、良い習慣を沢山身に付けて欲しい!」という思いが伝わってきます。

洋書としては、出てくる単語は比較的易しく、文章も平易ですので、とても読みやすいと思いました。

「良い習慣を始めたい」「悪い習慣を止めたい」と思っている方にとって、読んでみる価値が十分にある本だと思います。邦訳が出ていないのが残念…

2021年1月23日 (土)

TIGHTROPE / Americans Reaching for Hope

 

Nicholas Kristof氏とSheryl WuDunn氏の本は、これまで"Half the Sky"と"A Path Appears"を読んでいたので、本作も気になっていたのですが、ペーパーバック版が出たのを機に読んでみました。

前二作では、世界各地の女性問題や貧困問題を取り上げていたのですが、本作ではアメリカにおける貧困問題に焦点を当てています。Nicholas の生まれ故郷である街、Yamhill(Oregon)に住む幼馴染みの苦境を中心に据えながら、ここ数十年で悪化してきたアメリカでの貧困問題の状況(世代間の貧困の連鎖等)やその背景等を明らかにしていきます。その上で、一定の成果を上げつつある取り組みを紹介しながら、アメリカとしてどのような解決策を取っていくべきかを提言しています。特に、前作と同様に「できるだけ早い時期から子供・母親を援助・支援することが、貧困の連鎖を断ち切るには一番効果的である(費用対効果が高い)」ことを強く主張しているように思いました。

"Whether we're talking about public or private money, the highest-return investments available in America aren't in hedge funds or private equity, they're in American children."(本書より)

前回ご紹介した"Hillbilly Elegy"は、著者の個人的経験から、白人の労働者階級のおかれた厳しい状況を描いたものでした。一方、本書は、より沢山のケース、人々が取り上げられており、様々な専門家の見解も交えながら、より広い視点でアメリカの貧困問題を論じており、問題の全体像がより明らかになっていると思います。アメリカの特徴として、社会全体にdrugが蔓延しており、特に貧しい地域においては子供の頃からdrugが身近にあり、子供達が、自分の意志だけではdrugの影響から逃れるのが非常に難しくなっていると感じました。

全体として、アメリカの負の部分が描かれているので重い話になってしまうのですが、希望の持てる話も幾つも紹介されており、読んでいてそれほど辛くはなりませんでした。また、以前読んで感銘を受けた"Just Mercy"の著者Bryan Stevenson氏の話(13歳で終身刑に処せられた黒人の方を弁護する話)も出てきて、興味深かったです。

前二作と同様に、最後に、読者が今すぐとれる行動を幾つか紹介しています(Ten steps you can take in the next ten minutes to make a difference)。今回はアメリカの話なので、私自身が何かやってみようとは思いませんでしたが、日本の貧困問題(特に子供の)に対して何かとれるアクションはないか考えてみたいと思いました。前々作"Half the Sky"を読んで始めたプラン・インターナショナルへの支援も、早いものでもうすぐ10年になります。その間に、勤務先がマッチングギフトプログラムを始めたりして、貧困問題に対する取り組みは少しずつ広がっていますが、まだまだ不十分だと感じております。

本書も、前二作に引き続きいろいろと考えさせられ、何か新たな行動を起こしてみたい気にさせられました。お勧めできる本だと思いますので、"Hillbilly Elegy"のように邦訳が出るといいですね。

ご参考までに、前二作はこちら…

 

2020年12月 5日 (土)

Hillbilly Elegy / A Memoir of a Family and Culture in Crisis

この本も、数年前に渡辺由佳里さんの洋書ファンクラブで紹介されていて気になっていたのですが、読むタイミングを逸していました。Donald Trump氏が、任期中にあれだけ好き勝手やっていたにも拘わらず、今回の大統領選でもかなりの支持を集めていたことが不思議で、その背景を少しでも理解したくて、今回手に取ってみました。著者であるJ.D.Vance氏の回想録になります。

1984年に、Ohio州のMiddletownという衰退してく製鉄の町(いわゆるRust Belt)で生まれた著者は、経済的な貧さに加え、母親が薬物依存になってしまう、父親(母親の恋人)が目まぐるしく変わる、家庭内ではいざこざが絶えない、といった不安定な環境で育ちます。そんな環境でも、母方の祖母に精神的にも経済的にも支えられて、幾度となく危機を乗り越えていきます。そして、高校卒業後、海兵隊での4年間の貴重な経験を経て、Ohio State UniversityからYale Law Schoolへと進んでいき、そこで出会った女性と結婚し、幸せな家庭を築きます。

著者は、大学やLaw Schoolで出会う裕福な人達に違和感を感じつつ、自分が、子供時代に楽しい時を過ごした、祖母の故郷であるKentucky州Jacksonの人々(Hillbilly)の屈強な精神や考え方を受け継いでいることを、改めて認識していきます。そして著者は、その精神や考え方を大切に思いながらも、それ故に苦しんでいるHillbillyとその子孫の厳しい状況について、自分の成長過程とともに描いていきます。

アメリカにおける人種問題については、報道で知る機会も多く、本などを読んで理解を深める機会も多いと思います。一方、本書の主題の一つにである白人間での格差についてあまり知る機会がありませんでした。本書を読むことで、白人の労働者階級のおかれた厳しい状況の一端を知ることができたと思います。貧困の連鎖からなかなか抜け出すことのできない深刻な状況なのでしょう。本書は回想録なので、あくまで著者の視点から書かれたものではありますが、そうすることで却って、事態の切迫感、深刻さが伝わってくるように感じました。

本書で描かれているのは、アメリカで起きている問題ではありますが、日本でも、再び経済的格差が広がりつつあるように感じているので、我々日本人が本書から学ぶべきことも多々あるように思いました。

難しい単語もたまに出てきますが、比較的読みやすいと思います。登場人物や出来事が活き活きと描かれているので、話に引き込まれて、思っていたよりも早く読み終えることができました。終わり方も、とても心に響きました。2016年に出版された本ではありますが、現在のアメリカを理解するのに役に立つ本だと思いますので、ぜひ手に取ってみて下さい。

邦訳はこちら…

 

2020年11月 1日 (日)

Invisible Women / Exposing Data Bias in a World Designed for Men

渡辺由佳里さんの洋書ファンクラブで紹介されていて気になっていたのですが、ペーパーバック版が発売されたのを機に読んでみました。

世の中の様々な事柄が、女性のこと(主に、①女性の体のこと、②女性がその多くを担っている家事・育児・介護等(unpaid care work)のこと、③女性が男性から受ける攻撃・暴力等のこと)を考慮に入れないで決められており、結果として女性に不利な、女性に負担を強いる世の中になっている(ひどい場合には、女性の命が危険にさらされることもある)。著者は本書で、そのような事実を具体例、具体的なデータ等を挙げながら丁寧に説明していきます。いくつか例を挙げてみますと…

 

 薬の治験者は主に男性であり、そうして開発された薬が女性にも処方されるが、男性と女性では薬の効き方が異なるので、女性に対して、効かない薬が処方され続けることがある。また、治験者を女性として薬が開発されないので、女性に効く薬が開発されにくい。

 病気の診断は、男性に現れる典型的な症状をベースに行われるが、男性と女性とでは同じ病気でも症状の現れ方が違うので、女性については病気の診断が遅れることが発生する。

 自動車の安全性テストは、男性と女性とでは体の特徴が違うにも拘わらず男性のダミーだけで行われるので、衝突時に女性の体に与える影響が検証されておらず、車の事故が発生すると女性の方がより重症になりがち。

 最新のテクノロジー製品は、開発者が男性中心なので、音声認識システムは女性の声をうまく認識できないし、スマートフォンは女性の手に収まらない大きさになっている。

 仕事で使う農機具、工器具、工事機械、作業服、安全用具等が男性の体を基準に作られているので、女性の体に合わず、女性の体に負担をかけたり、女性の体をしっかり守れていなかったりする。

 オフィスは男性の使用を前提に作られているので、ドアは女性にとって重すぎるし、室温は女性にとって低すぎる設定になっている。

 女性がその多くを担っている家事、育児、介護等(unpaid care work)の都合を考慮に入れないで街づくりが行われるため、団地や公営住宅の周辺に必要な施設(スーパー、病院、保育園、幼稚園、バス停等々)が設けられていなかったりして、女性に負担がかかっている。

 我々は子供の頃から女性に対するステレオタイプ(控え目?優しい?理性的ではなく感情的?)が刷り込まれるため、積極的・野心的な行動は、男性だとプラス評価されるが、女性だとマイナス評価されるといったことが起こる。会社、大学等における採用、評価、昇進等においてもそうだし、公職の選挙においてもそうである。

 上記のようなステレオタイプがあるため、女性の発言は、男性の発言よりも妨げられ、遮られることが多いし、非難、批判を受けやすい。

 女性が男性よりも家事、育児、介護等(unpaid care work)を担っているので、会社内では同じ労働時間であっても、unpaid care workを含めると女性の方が総労働時間が長くなり、結果として女性の方が病気になる可能性が高くなるが、その対策がとられていない。

 災害時や紛争時の避難所は、女性のニーズや安全を考慮せずに設営、運営されることが多いので、女性が必要なものを入手できず健康を害したり、男性からの暴力にあったりして、普段よりも一層不利な立場に追い込まれる。

 女性の安全を考慮せずに、駅やバス停が建設、設置されるので、女性は男性からの暴力にあうことを恐れて、危険そうな場所や時間帯を避けざるを得ず、女性の行動範囲や行動時間に制約が生じている。

 

他にも沢山、女性が不当に負担を強いられている例が挙げられています。

その上で著者は、「人口の半分を占める女性」のことが考慮されずに物事が決定されているのは問題だとして、①女性にも影響を与える事柄を決める際には、男性だけでなく女性の意見やニーズ等もよく聞き、男性だけでなく女性についてのデータも積極的に収集し、その上で意思決定すべきである、②男性は女性のニーズが見えていない(男性と別のニーズがあることに気づかない)ので、意思決定にもっともっと多くの女性を参加させる必要がある、と主張しています。

本書では、女性に負担を強いている実例が約300頁にわたって次々と述べられるので、正直なところ圧倒されてしまい、読んでいて少し辛くなってきますが、それだけこの問題は根深いのだと思います。本書を読んで、男性として自分が見えていなかった現状が少し見えてきたので、読んで良かったと思いました。以前読んだSheryl Sandbergの「Lean In」の話が少し出てきたのも、興味深かったです。

今後、本書で学んだことを頭におきながら、投票をしたり、また会社においては、会議の仕方を工夫したり、人事考課を工夫したりと、いろいろ試していきたいと思いました。

単語も文章もそこそこ難しく、読むのに多少骨が折れると思いますが、具体的な事例が豊富で、日本の事例もしばしば出てくるので(育休制度、税制、長時間労働等、残念ながら悪い事例として…)、興味深く読めるかと思います。時々、文章にユーモアが感じられるのもいいです。これからの社会のあり方を考えるために、女性はもちろんのこと、男性にもぜひとも読んでいただきたい本だと思いました。邦訳も出るといいですね。

 

2020.11.14追記

嬉しいことに、邦訳が出版されるとのこと。多くの方々に読まれるといいなぁ…

«That Will NEVER Work / The Birth of NETFLIX and the Amazing Life of an Idea

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