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本書は、以前書店で見かけて気にはなっていたのですが、昨年読んだ「NO RULES RULES / NETFLIX and the Culture of Reinvention」に出てきたので、これを機会に読んでみました。2014年出版と少し古いですが、とても参考になりました。
国境をまたいで世界でビジネスを展開するにあたって、各国の文化・考え方の違いが障害になることが多いようです。本書では、まずは各国の文化・考え方の違いを明らかにし、その上でその違いをどのように乗り越えていったらよいかを提示しております。
本書では、以下の8つの点について、各国の文化・考え方の違いを整理しています。
1 コミュニケーションの方法が、どのくらい簡潔で明確で直接的か? どのくらい行間を読む必要があるか?
(Low-Context or High-Context)
→日本は最もHigh-Contextな国の一つ。
2 否定的な評価を、相手にどのくらい率直に直接的に伝えるか?
(Direct negative feedback or Indirect negative feedback)
→日本は最もIndirect negative feedbackな国の一つ。
3 相手を説得する時に、理論や理屈から入るか、事例や個人的見解から入るか、それともまず全体を俯瞰するか?
(Principles-first or Applications-first, or Holistic thinking)
→日本は他のアジアの国と同様にHolistic thinking。
4 上司と部下の距離はどのくらい離れているか、組織はどのくらい階層的か?
(Egalitarian or Hierarchical)
→日本は最もHierarchicalな国の一つ。
5 意思決定は、どのくらいトップダウンでなされるか?
(Consensual or Top-down)
→日本は最もConsensualな国の一つ。
6 ビジネス上の信頼関係が、どのくらい非公式な場、個人的な付き合いで築かれるか?
(Task-based or Relationship-based)
→日本はRelationship-based寄り。
7 不同意を、相手にどのくらい公に直接的に伝えるか?
(Confrontational or Avoids confrontation)
→日本は最もAvoids confrontationな国の一つ。
8 スケジュールや物事を進める順番をどのくらい正確に守るか?
(Linear-time or Flexible-time)
→日本はかなりLinear-time寄り。
各国の文化・考え方の違いを押さえるにあたり留意すべき点として、違いは相対的に捉える必要があるとのことです。例えば、アメリカ人とイギリス人で構成されるチームでは、イギリス人は「アメリカ人と比べて」どのような傾向があるのかを考える必要があるとのことです。
各国の文化・考え方の違いを乗り越える方法も、上記の8つの論点毎に丁寧に記載されていますが、大まかに言うと、チームを組んだ初期の段階で、各国の文化・考え方の違い・傾向についてお互いに話し合って理解した上で、今回のチームで適応されるルール(プロジェクトの進め方)について合意する、という手順を踏むのが効果的なようです。
本書では日本での事例が頻繁に出てくるので、日本人として当事者意識を持って本書を興味深く読むことができました。特に、上記の5点目(意思決定の仕方)において、日本の稟議書の仕組みについて「The Japanese Ringi System: Hierarchical But Ultra-Consensual」として5頁に亘って記載されているのが興味深かったです。常々「日本の会社では、意思決定が遅いよなぁ…役職者が偉そうにしている割には責任取らないよなぁ…」と思っていたので、その理由か分かったような気がして少しすっきりしました。あと、自分のこれまでの会社人生を振り返ると、会議等の大勢がいる場で、自分の意見を積極的に述べたり、役職が上の人の意見に対して異を唱えたり指摘したりしてきたのですが、日本の文化にはあまり馴染まないやり方だったなぁ…としみじみ思いました。風通しが良い組織になかなかならないのも、日本人の文化・考え方が影響していることが良く分かりました。
洋書の読み易さとしては、文章も単語も比較的平易で、読み易いと思います。
各国の文化・考え方の違いについて述べている本ではありますが、その過程で日本の文化・考え方の特徴も理解できるようになる(相対化できる)良書だと思います。これからのビジネスは、日本の少子高齢化も相まって、世界の方々と広く付き合っていかないと成り立たなくなると思いますので、本書は強くお勧めできると思います。私としては、若い時に読んでおきたかった…
日本語訳はこちら。