今年の4月に、このブログで感想を書いた本"Lean In"ですが、6月26日に日本語訳が発売され、来月上旬には著者のSherylさんが来日されることもあり、日本でも話題になってきているようですね。
(4月のブログ記事)
http://irish.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/lean-in---women.html
この本について、最近、他の方とお話しをする機会があり、その中で話したり書いたりしたことを、ちょっとまとめてみました。以前書いたことと重なるかもしれませんが、よろしければお読み下さい。(2回に分けます)
1 "Careers are a jungle gym, not a ladder."について
4月にも書いたとおり、一番印象に残った箇所です。
サラリーマンのキャリア・パスは、梯子(ladder)に例えられることがほとんどだと思います。会社では、始めの何年かでいろいろな業務を経験して、自分の適性や得意分野を見つけ出し、その方向の業務を極めていくというのが、一般的なキャリア・パスのイメージではないかと思います。
自分を例にしてみると、現在は、法務関連の仕事を任されることが多くなってきておりますので、やはり、法務関連の仕事を中心に定年までやっていければなぁ…と漠然と思っています。「法務(関連)」という札のついた梯子を登っていくイメージですかね。
ただ、そのようなイメージだけを持っていた場合、何らかの理由で「法務(関連)」の梯子を諦めなくてはならなくなった場合、例えば、法務の仕事で失敗を続けてしまった場合(他にも、より能力の高い若い法務担当者が沢山育った場合、自分自身が法務の仕事に嫌気がさしてしまった場合など、沢山沢山考えられると思います)、その後の会社人生は、うまく対応できず、楽しめなくなるのではないかと思っています。
そして、変化の速度がどんどん速くなってきている今日では、そのようなこと(「法務(関連)」の梯子を諦めなくてはならなくなること)は、かなりの確率で起こると思っています。
では、そのような場合でも、楽しい会社人生を送るためにはどうしたら良いか、その一つの答えが、
Careers are a jungle gym, not a ladder.
ではないかと思っております。
梯子だと、自分の登ってきた梯子を一旦下まで降りてから、また違う梯子を一から登らなくてはなりませんが、ジャングルジムだと、一旦下まで降りなくても、すぐ隣にも道があります。梯子のように定まった道ではないので、多少不安を覚えるかもしれませんが、いままでのキャリアを捨てずに(梯子を降りずに)、自分の得意分野から派生させて自分なりの立ち位置を作っていくことができます。
このようなジャングルジムのイメージ(考え方・気持ち)を持つことで、変化の速度がどんどん速くなってきている今日の世の中にも対応し易くなると思います。
更には、将来、脇道に進んで行けるようになるために、自分の得意分野だけでなく、いろいろな分野にもチャレンジしておこう、という気にもなるかと思います。
ということで、自分としては、いろいろなソーシャル・メディアを使ってみたり、洋書の聞き読み(音声を聞きながら読むこと)をしてみたり、英文契約書の読み方を勉強したりしています(独学ですが…)。仕事上でも、自分の担当以外の仕事にも、前より関心を持つようになったかと思います(少しですが…)。
2 社会における、性別に基づくバイアス、ステレオタイプ、偏見について
( 自分はどうなのか! )
この本では、あまり明確には意識されていないが、でも確実に存在する「性別に基づくバイアス、ステレオタイプ、偏見」、例えば、
・女性は従順であるべき、男性は挑戦すべき。
・女性は家庭を大切にすべき、男性は仕事で頑張るべき。
・仕事で成功した男性は好意的に見られるが、仕事で成功した女性はあまり好意的に見
られない。
・無意識のうちに、女性に対しては、男性よりも親身な対応、暖かな対応を求めている。
といったバイアス等があることを、データ、実験結果等に基づき冷静に説明しているので、とても参考になりました。
と共に、自分自身もこのようなバイアス等に影響されていることに改めて気付かされました。
例えばですが、年下の社員が自分に議論を挑んできた場合、男性であれば、
「なかなか骨のある奴だなぁ~頑張れよ!」
となるところ、女性だった場合には、
「年下なのに、先輩の意見を尊重せず議論を挑んでくるのか…」
「そんなにムキにならないでよ…」
というふうに思ってしまう傾向があるのではないか、と反省させられました。実際の場面では、そんなに極端ではないかと思いますが、上記のような傾向は、確かに自分にもあると思います。
この点は、結構耳の痛い話でしたが、このようにバイアス等に影響されがちなことは、しっかり意識しておく必要があると強く感じました。
これから、会社で女性の社員と打ち合わせをするときは、出来るだけこのようなバイアス等に影響されないように心掛けたいと思います。もし、女性の同僚等に対して不愉快な感情を抱いた場合には、ちょっと立ち止まって、息を大きく吸って、「彼女が男性だったらどう思う?」と自問したいと思います。
3 仕事と家庭との両立について
まず、この本に載っている一つデータを紹介いたします。
In 1975, stay-at-home mothers spent an average of about eleven (11) hours per week on primary child care. Motheres employed outside the home in 1975 spent six (6) hours doing these activities.
Today, stay-at-home mothers spend about seventeen (17) hours per week on primary child care, on average, while mothers who work outside the home spend about eleven (11) hours.
This means that an employed mother today spends about the same amout of time on primary child care activities as a nonemployed mother did in 1975.
素直に「そうなんだ!」と驚きました。専業主婦の方々も、仕事をしている女性の方々も、どちらも、もう既に頑張りすぎなんでしょうね…
そしてSherylさんは、次のように、仕事でも家庭でも頑張る女性達を応援しています。
One of the findings is worth reading slowly, maybe even in twice: "Exclusive maternal care was not related to better or worse outcomes for children. There is, thus, no reaseon for mothers to feel as though they are harming their children if they decide to work."
The right question is not "Can I do it all?" but "Can I do what's most important for me and my family?"
「仕事と家庭の両立、なんて簡単に言うけれど、どちらも完璧にこなすなんて不可能だし、そんな必要もない!」という応援メッセージに、データ等の説得力が伴っているのが、なんとも心強いと思います。
4 まず、自分の体験、気持ちを積極的に表明することについて
Sherylさんは、批判されるかもしれないという恐れを抱きながらも、まずは自分から率先して、自分の体験、気持ちを積極的に開示して、議論や共感を起こそうとしています。例えば…
If my son wants to do the important work of rasing children full-time, I hope he is respected and supported. And if my daughter wants to work full-time outside her home, I hope she is not just respected and supported, but also liked for her acheivements.
私も、二人の娘の親として本当にそう思いますし、素直に共感できました。それは、Sherylさんが、データ等に基づいて客観的に書くだけでなく、自分のこととして主観的にも書いているからこそ、素直に共感できたのだと思います。
また、Sherylさんほどの人物が、職場で辛くて泣いたことが何回かあるということ自体が正直驚きなのですが、それを積極的に開示しているのにもっと驚きました。「みんなも自分の気持ちをもっと表に出そう、話そう!」という強力なメッセージを出すと共に、本気で、大きなうねりを起こそうとしているのだと思いました。
(つづく…)